男性化粧品市場は、日本だけでなく世界的に拡大しています。コロナウイルスの拡大によりオンライン会議が主流となり、画面越しに映る自分の顔を見る時間が増えてしまい、見栄えをよくしたいと考える男性が増加し、さらに市場が拡大しています。
中国では95年生まれ以降の「Z世代」の男性達が、日常的に化粧をすることに抵抗がなくなってきており、男性化粧品市場は顕著な拡大をしているため、資生堂やロレアル、エスティーローダーなどのグローバル企業から、中国発のブランドまで多数の企業が参入し激しい争いになっています。
そこで中国の男性化粧品市場の規模を把握したうえで、「どのジャンルの商品が売れているのか?」「売れている理由はなぜなのか?」などを、中国マーケティング調査ツール「ミーエル」を活用して調査してみました。
中国男性化粧品の市場規模
世界の男性化粧品市場は年々成長しており、2017年、全世界の男性用化粧品市場は約6兆7,733億円に達し、2023年までには約9兆1,440億円に達すると推定されています。
その中で中国の男性用化粧品市場は過去4年間で年平均7.7%の成長率で急速に成長しており、昨年の市場規模は167億元(約2,836億円)に達しました。
そして、2013年の中国の男性化粧品市場の規模は104.41億元でしたが、2018年には144.85億元に増加しました。その後の平均年間成長率は6〜8%、2023年までに200億元(約3400億円)を超えると見込まれています。全世界の9兆円と比べると小さいですが、伸びしろと見て良いのではないでしょうか。
ちなみに、富士経済によると日本の男性化粧品市場は、2019年が約1200億円と言われております。
※出典:2021年中国男性化妆品市场规模及发展趋势分析(图)-中商情报网
中国男性化粧品市場の売れ筋ジャンル
男性用化粧品のさまざまなカテゴリーから、スキンケアカテゴリーが全体の70%近くで最大の市場シェアを持ちながらも、コスメカテゴリーが前年比で最も速い成長を遂げていることもわかります。
男性用スキンケア市場では、洗顔が圧倒的なカテゴリーで市場シェアは最大約40%を占めております。成長率では男性用日焼け止めが最も速く52%に達しています。
そして、男性用コスメ市場を見ると年平均成長率が110%を超えています。中でもBBクリームは急成長を続け、シェアは80%近くを占めました。口紅などの他のサブカテゴリも成長しています。
タオバオ・Tmallでの男性用化粧品の人気商品を調査
では、天猫・淘宝網では具体的にどの商品が売れているのか調査してみましょう。
ミーエルを使い淘宝網のキーワード検索で【男士 化妆品(男性 化粧品)】と調べてみると、男性用のBBクリーム、ファンデーションや男女共に使えるスキンケア商品が売上の上位に並びます。
第1位:左颜右色(MAN CODES)の男性用BBクリーム
MAN CODESは2012年、「广州迷紫化妆品有限公司」がリリースした男性用化粧品ブランドです。今回第1位になったBBクリームは夏専用となっています。直近30日間で6万個以上売れています。
第2位:ロレアル(MEN EXPERT)の男性用BBクリーム
第2位も男性用BBクリームです。こちらの商品はロレアル男性用化粧品旗艦店で販売されていて、直近30日間の販売数量は36,851個です。
第3位:蓝尼芳可(LANNIFANGKE)のフェイスクリーム
蓝尼芳可は2016年に誕生した中国の化粧品ブランドで、特に「贵妇膏(フェイスクリーム)」が有名です。今回第3位にランクインした商品は男女共に使えるフェイスクリームです。
第4位:H&E/赫恩のBBクリーム
H&Eはイギリスの化粧品ブランドですが、2007年に中国へ進出し、「广州天翼化妆品有限公司」を設立し、中国でメンズ製品の販売を開始しました。そして、第4位の商品もBBクリームです。
第5位:gf/高夫のフェイスパック
1992年中国で最初の男性用化粧品ブランドとして誕生したのが高夫です。これまでは、香港の大人気スター「梁朝伟(トニー・レオン)」をブランドイメージキャラクターに起用してきました。今回第5位にランクインしたのは、ニキビやオイリー肌に特化したフェイスパックです。
微博(weibo)での男性化粧品の人気商品を調査
次に、ミーエルの微博でのキーワード検索を活用して【男士 化妆品(男性 化粧品)】と調べてみたところ、上位に来たのは「BBクリーム」、「フェイスクリーム」、「フェイスパック」でした。
最近男性の美容系KOLが増えており、そういった方々が男性メイクの投稿や宣伝を多く行っているため、先にご紹介した淘宝網での売れ筋と同様に、微博でもBBクリームやフェイスクリームの投稿が上位にきます。
どのような内容で紹介されているのか
どのような内容で紹介をされているのか一例をあげてみると、普段男性が外に出かける前に、スキンケア⇒髭剃り⇒ベースメイク⇒眉毛廻り⇒リップという流れで仕上げることを推奨している投稿が多く見られます。
このところの中国では、【精致(ジンジー)】という言葉がトレンドワードになっているのですが、これは男性に対しての褒め言葉で繊細で清潔にしているという意味で使われています。(本来は男性向けではない)そのためスキンケア、髭剃り、眉毛ケアというのが清潔感を保つ理由として女性たちからも推奨されています。
中国では、最近の若い男性は韓流の男性アイドルのような白くて肌がキレイな男性が人気になっており、男性側もそのような見た目を目指してメイクをする男性が増えています。一部の女性は「男性は男性らしくいるべきだ!」と言っているようですが、清潔感があれば薄いメイクはあり、という意見の方がSNS上では多いようです。
小紅書(RED)での男性化粧品の人気商品を調査
次に、淘宝網で売れている男性スキンケア商品が、小紅書でどのようにプロモーションを仕掛けているのかをミーエルで見てみます。
ミーエルで【男士 水乳(化粧水・乳液を指すワード)】を検索し、月間販売数量No.1のAHCという韓国のブランドの商品について深堀りしてみます。
小紅書で投稿されている記事を分析してみると、「清爽(爽やか),不油腻(オイリー感がない),好推开(塗りやすい),好吸收(吸収しやすい)」などのキーワードがこの商品のアピールポイントとなっています。
女性は保湿、エイジング、美白、毛穴など肌質によって様々な悩みがあり、女性向けのスキンケア商品もニーズごとに分けられていますが、男性は基本的に肌のオイリーやニキビを気にするので、さっぱりするスキンケアが最もニーズとしてあるのでしょう。これは日本でも同様ですね。
小紅書の投稿記事をさらに調べると、AHCは大量のKOCを活用しており、投稿内容は一般人の男性が顔出しをした投稿が目立ちます。おそらく本当に男性も使用しているということを訴求することを目的にしているのだと思います。
また、男性用スキンケア商品は、「彼氏/旦那/お父さんに買ってあげる」、「男性にプレゼントとしておすすめの商品」というテーマで多く紹介されています。
男性より女性の方が先に男性の化粧について議論しているあたりは中国らしいですね。きっと、女性が求める男性像に近づくよう男性も意識せざるを得なくなり、清潔感に対する意識がさらに高まっていくことでしょう。
こういったことから男性化粧品のマーケティングは、男性に向けて行うより、女性に向けて行う方が効果的なのかもしれません。
今後売れそうな男性化粧品ブランド予測
これは、私の予測ですが、今後は、こんな商品が男性向けに売れるのではと勝手に…思っています(笑)。
THREE(スリー)
一つ目は、THREE(スリー)です。
THREEは、中国で大人気ブランドのPOLAと同じ、ポーラ・オルビスホールディングスの子会社で中国でも人気のブランドです。もちろん、女性向けのブランドとして。
小紅書でTHREEの記事を調べると、女性向けのスキンケア商品紹介がメインなのはもちろんですが、女性が【男性にプレゼントとしたいスキンケア商品】としても紹介されています。これがまさに、男性向け化粧品マーケティングの模範となるコミュニケーションになっていると思います。
また、THREEのパッケージは、日本人の概念であるシンプルイズベスト(≒ミニマリズム)を表現されており、中国人も同様に、このようなイメージを好む傾向があります。中国では、それを「性冷淡风」と言います。
FANCL(ファンケル)
二つ目は、FANCL(ファンケル)です。
FANCLの男性用スキンケア商品はすでに小紅書で数多く投稿されています。主に「彼氏/旦那にプレゼントする」というテーマで投稿されていて、「1本で保湿からエイジングケアまでのオールインワンケア」が紹介ポイントとなっています。元々スキンケアに不慣れ、面倒くさいと思っている中国人男性にとって、オールインワンは魅力的なアピールポイントです。このようなコミュニケーションも中国では、重要なポイントになります。
まとめ
以上、中国の男性化粧品市場と、人気商品がなぜ売れているのか、男性向け商品はどのようなマーケティングをするのが良いか、などを解説させていただきました。
ミーエルを使用してみたい方は、2週間無料でお使いいただけますので、是非お問い合わせ下さい。
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この記事を書いた人
2008年、株式会社東急エージェンシー入社。国内企業・外資企業を担当し、2016年より30歳(当時最年少)にて部長職として、営業部門を統括。2017年より、ENJOY JAPANに参画し、日本企業の中国市場展開(マーケティング・越境EC)、中国企業(エンターテインメント系)の日本進出を担当。