今回は、中国トップクラスの動画プラットフォームと言われているビリビリ(bilibili)動画について概要からUp主の収入源、企業の広告プロモーション活用方法まで解説します。
ビリビリ動画とは?
Bilibiliは中国トップクラスの動画プラットフォームで、2009年に徐逸によって立ち上げられた「Mikufans」という弾幕ビデオ共有サイトからスタートしました。この弾幕は日本のニコニコ動画を真似たと言われています。その後2010年にbilibili(哔哩哔哩)と改名し、中国のユーザーには「B站」と呼ばれ現在に至ります。
2018年にはアメリカのNASDAQにも上場を果たしていて、2020年5月現在では月間のアクティブユーザー数が1億7,200万人を越える、中国の超ビック・動画プラットフォームとなっています。
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どのようなコンテンツが見られているか
元々日本のアニメコンテンツが中心だったためか、かつては「若者のオタクやサブカルチャー向けの動画サービス」というイメージが強かったのですが、サービス開始から10年が経ちユーザーの年齢が上がってきたことに加え、Z世代からも支持を受けたことによりコンテンツが多様化するようになりました。Youtubeのように、ユーザーが自由に投稿をしている動画もあれば、鬼滅の刃や攻殻機動隊など、しっかりと権利を買い取った形での日本のアニメ動画もあるし自己学習用の学び系動画もたくさんアップされています。
私個人的に驚いたのは、2020年の5月に発表された1~3月の第一四半期におけるサイトの平均滞在時間は87分という驚異的な長さだったことです。コロナ禍で在宅時間が長かったことも要因として大きいのだと思いますが、それにしてもおよそ1時間半もサイトに滞在しているというのは、もはやインフラの一部のような存在になっているといえるかもしれません。
Up主の収入源
また、中国はインフルエンサーと呼ばれている人たちが数多く存在するということは、すでに皆さんもご存知かと思います。もちろん、bilibiliでもUP主と呼ばれる多くのインフルエンサー達が活躍をしています。こういう話を聞くと、「YouTuberのようにUP主も儲かるのか??」と思わずにはいられないのは、私だけではないはずです。
広告収入
UP主がbilibiliで収益を上げようとする場合、大きく次の5つの方法があります。
まず1つ目は、再生数に応じた広告収入。Bilibiliの場合は1,000再生で3元(約45円)の収入と言われています。なので、1万再生で450円、10万再生で4,500円、100万再生で45,000円という計算です。Youtubeに比べると、だいぶ単価が安いですよね。
企業タイアップ
2つめは、企業タイアップです。企業から報酬を受け取り、動画の中で依頼主の商品やサービスを紹介する形です。こちらに関しては弊社でも日本企業様からの依頼を受け、適切なup主を探しコンテンツを作ってもらう、ということを行っております。
投げ銭(充電)
3つ目はアカウント主に対して、投げ銭のようなイメージの「充電」です。1元で10コイン購入ができ、気に入ったアカウントに「充電」を送るシステムです。その際、bilibiliに対して報酬金額の30%が手数料として発生します。
ライブ収入
4つ目はライブ収入。ライブを実施した際に視聴者から値段に応じたプレゼントをもらうシステムです。日本にも同じような仕組みのライブアプリがありますよね。このシステムはbilibiliに対して50%の手数料を支払う必要があります。
動画コンテストの入賞賞金
そして5つ目は、bilibiliが主催する動画コンテストに入賞し、賞金を得る方法で、コンテストごとに賞金が設定されています。
収益化の前に認知向上と相性が良いことを念頭に置く
以上5つのパターンがbilibiliで収入を得る方法です。1つ目にご紹介をした再生回数に応じた広告収入の計算からも分かるように、UP主として動画の配信だけで生計を立てるのは今のところなかなかハードルが高いようです。最近少しずつ出てきてはいるものの「日本のyoutuberがビリビリ動画にも進出した!」というニュースを中々聞かないのは、言葉のハードル以外にもこういった事情が大きいのかもしれません。
ただ、収益ではなく、中国での認知度向上を目的とする場合には効果的なので、日本の芸能人のアカウント開設が増えていて、最近では俳優の小栗旬さん、お笑い芸人の陣内智則さん、元NEWSの手越祐也さん、声優の豊崎愛生さんなどが開設しています。
企業のビリビリ動画活用方法
これだけ中国のZ世代などからの支持を得ている媒体ですから、企業も活用しない手はありません。多くの企業が様々な形でビリビリ動画をプロモーションのために活用していますが、代表的な活用方法を解説します。
企業公式アカウントの開設
企業の公式アカウントを開設し、自社で作成した動画を配信したり、テキストを投稿する機能を活用して商品のリリース情報や、企業としてのメッセージを発信します。商品の正しい使い方や、CM動画をアップするなどに向いています。その他にLIVE配信を行うこともできます。
Up主などのインフルエンサーの活用
上記でも説明をしたUp主と呼ばれるインフルエンサーに依頼をして、自社の商品やサービスの紹介をしてもらいます。ビリビリ動画には「花火」という広告KOLプラットフォームがあり、自社にあったUp主を探してPRを依頼することができます。
プロダクトプレイスメント広告
ビリビリ動画は、アニメやゲームなどの自社のオリジナルコンテンツを作成しています。その作中に、自社の商品を自然な形で登場させます。例えば、登場人物が普段使用している化粧品などを、スポンサーの商品にすることが可能になります。ただし、スポンサー費用は高額な場合が多いです。
商品販売
あまり日本では知られていませんが、bilibiliにはECモールがあります。EC事業は好調なようで、越境ECでの販売を行うこともできます。他のECプラットフォームと違い、フィギュアやキャラクターグッズなど、いわゆるオタク向けの商品がよく売れるというのも特徴です。
ビリビリ動画製作のゲームが日本で絶好調
昨年からのコロナ禍の影響もあって、アプリゲーム市場が日中で大きな盛り上がりを見せています。
ビリビリ動画はゲーム制作も手掛けていて、日本市場に対して次々とタイトルをリリースしています。
「アークオーダー(方舟指令)」は無料ゲームランキングで7位、「魂器学院(HorcruxCollege)」は同じく5位に入るなど、ランキング上位に入るのも珍しくなくなってきました。
中でも、2020年10月に日本でローンチとなった「ファイナルギア(重装戦姫)」はApp StoreとGoogle Playで無料ゲームランキングのトップに立つほど人気となりました。
これはテレビCMや声優のサインが当たるTwitterのキャンペーンなど、日本市場に合ったプロモーションがハマったと言われています。
ビリビリ動画のこれからの課題
そして、もちろん全てが順調なわけではなく、今後に向けた課題も抱えています。中国にはbilibiliの他にも動画プラットフォームは数多くあり、中でも特に有名なのは、愛奇芸、youku、腾讯视频といったところが上げられます。Bilibiliはこれら有名プラットフォームと比較をした時、有料会員が月間アクティブユーザー数の8%しかおらず安定した会員収入が少ない、という大きな課題があります。これは、有名プラットフォームは、Netflixのようにプロが制作した商業コンテンツであるのに対し、bilibiliはyoutubeのように個人が制作した主なコンテンツである、ということが大きな要因です。
月間アクティブユーザー数は順調に右肩上がりで増えているものの、2019年度も通期で約200憶円の赤字となるなど、その収益性を改善していく必要があります。ソニーのアメリカ法人が2020年4月に4億ドル(約405億円)を出資し、主要株主にはテンセントとアリババの両社が名を連ねていることもあり、会社としてのキャッシュフローは問題ないと言われているので、キャッシュが潤沢にある今のうちから黒字化へのビジネスモデルを作っていけるのか、今後の動きに注目です。
新たなビジネスモデルの構築へ①エイベックスとの提携
そんな中、2021年1月には、コンテンツの充実を図るため、日本の大手ミュージックレーベル、エイベックス株式会社とライセンス契約を締結し、エイベックスが保有する3,300曲のミュージック・ビデオの提供を受けられることになりました。
エイベックスとしてもこの提携を皮切りに、オンラインライブなども中国で手掛けていきたいという意図があるようです。
日本の芸能界全体の動きとしてこういったbilibiliのような中国の大手プラットフォーマーと組み、中国進出を図っていく動きは今後も増えていくかもしれませんね。
新たなビジネスモデルの構築へ②「ビリビリペイ」で決済サービス参入!?
2021年1月、中国の中国工業情報化部のICP登録システムによると、ビリビリの運営会社である「上海幻電信息科技」が「bilibilipay.com」「bilibilipay.cn」などのドメイン名を登録していたことが分かりました。(出典:36kr)
2021年10月時点では、まだその後「サービスのローンチ」に関する情報は出てきていないため、現在はまだ開発段階であると予想されますが、近年、ショート動画アプリの抖音(TikTok)が決済サービスに参入し、抖音(TikTok)のライバルである快手もライセンスを取得し決済サービスに参入すると言われています。そのため、現在の中国の2大決済サービスである、アリババ系の「Alipay(アリペイ)」、テンセント系の「wechat pay」に続く、第3の決済サービスのポジションを取るのは、bilibiliと言えども、非常に前途多難であることが予想されます。
bilibiliが「Alipay(アリペイ)」や「wechat pay」に頼らず、自分たちの決済方法を採用することでユーザーの決済データに関するビックデータを自社で獲得することが出来、ほかの事業部門とのシナジー効果だけではなく、金融や保険のサービスといった新規ビジネスへの展開が可能性として考えられるようになります。あらゆる可能性の中から、どのような次の一手を打つのか。今後、続報が出てきたらまたご紹介をしていきたいと思います。
YouTube動画でも解説!
今回のコラムは、YouTubeでアニメーション動画でもご覧頂けます。
5分程度ですので、通勤の行きかえりなどでもお楽しみ頂けます。
併せてぜひご確認ください!
この記事を書いた人
一貫して営業畑を歩み、前職の広告代理店でインバウンド事業部を立ち上げ目標売上300%を達成し、その実績を買われ2016年にENJOY JAPANに参画。クライアントはドラッグストアとメーカーが多く、徹底してクライアントの売上向上に尽力してきた結果、一度担当したクライアントは必ずと言っていいほどリピートしていく。