本日は特別なゲストをお招きして、訪日外国人のマーケティングの分析・戦略策定について皆様にお伝えしていきたいと思います。

訪日客に対するアプローチ方法の問い合わせや、中国に限らず様々な国の相談のお問い合わせが増えています。実際のところどのように分析をしているのか、戦略をどのように立てているのか?深堀させていただければと思います。

海外マーケティングの基本的な思考法についてゲストをご紹介します。現在株式会社ENJOY JAPANの取締役であり、一般社団法人新観光創造連合会の理事を務め、普段は戦略分析や立案、口コミの分析を担当されています。中山隆央さんです。この記事では海外マーケティングの基本的な思考法についてお話していただきました。

この記事の内容は、当社YouTubeチャンネルでも発信していますので、ぜひそちらもご覧ください。

中山さんの経歴紹介

中山さんは2008年に東急エージェンシーに入社し、2016年には史上最年少の30歳で部門長に就任されました。2018年からは株式会社日宣中国ビジネス開発の室長を務め、株式会社ENJOY JAPAN執行役員を経験し、2022年には現職となり、訪日外国人のマーケティングの分析や戦略策定を主に担当しており、多くのクライアントの支援を行っています。

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海外マーケティングの分析の基本的な思考について

ーー早速質問ですが、海外の人たちのマーケティング分析は具体的にどのように行っていますか? 例えば中国市場からお話ししていただければと思うのですが、訪日中国人の方の口コミ分析であったり、分析をもとに戦略を立案する際に心がけているのか?普段どういったところから手を付けていくのか?そういったことを具体的にお話しいただけますか?

中山さん:日本人が外国人のことを分析するのって本当に難しいとことだと思っています。やはり外国人のいろいろな時代背景や歴史背景があって、行動や価値観なども違うので、それらをひとつひとつ煮詰めていくことがとても大切です。日本の感覚を一旦忘れて外国人のできるだけ多くの事実を集めていくことに注力する必要があると考えています。

ーーでは、情報を集めるときに、例えば中国なら中国人になりきって分析をするのか、逆になりきり過ぎてしまうと感情が入ったり冷静な判断ができないのでそこはもう一切感情を抜きにあくまででもデータで判断していくのか?どちらに重きを置いていますか?

中山さん:いろいろとやり方はあると思うのですが、私の場合は自分の感情というか中国人になりきるということは一回忘れて、「事象・事実に本当に向き合う」、それをどれだけたくさん繰り返して情報を抽出できるのか?ということがポイントになると思います。

ポイント

「事象・事実に本当に向き合う

事象・事実と向き合う

ーー「事象・事実と向き合う」ということをポイントとしてあげられましたが、例などあればお話いただきたいです。

事実A・B・C

中山さん:たくさんの事象・事実があって、それが事実であるけども真実がどうかはわからないんですね。

例えば、あるAさんが事実Aという行動をしたとして、でもBさんは事実Bという行動があって、Cさんは事実Cという行動があって、それぞれがバラバラだったり、もしくは共通項があったりこれだけだとわからないんですよね。だからたくさんのサンプルを集めないといけません。

A真実ではない
概念
概念2

ただ、その事実Aだけを見て、「これが真実Aだ」とならないように、その中から事実を抽出して、おそらく共通項はこうなんじゃないか?ということを、抽象X、抽象Yみたいな形でどんどん作っていくと、これはどうやら誰にでも当てはまっているなとなれば「概念」という形で捉えて事象から抽象化をして抽象化をたくさん並べて、間違いないとなったらそれを概念化していく、そのような方法で真実に近づいているのだと思います。

事実から真実を抜き取る

ーー事実から真実を抜き取る・拾っていくという作業をするときに、ある程度仮説を立てて分析をすることが多いのか?はたまたあくまで事実だけ導くのか?どちらですか?

中山さん:日本のマーケティングをずっとやっていましたが、日本のマーケティングにおいてはある程度仮説というものが成り立つと思います。

というのは日本人が日本のことを分析しているので結構仮説は立てやすい。ただ日本人が日本人以外の人種を分析するとなると、その仮説というのが自分の憶測になってしまって、やはり真実に近づきづらいですよね。そういった意味では、仮説すら最初の段階では立てれていないと考えれます。

あくまでいろいろな真実を抽出してその中から共通項をまとめる。抽象化してそれを概念化するときには「おそらくこうなんじゃないか?」という人間の深層心理みたいなところについてはある程度想定できるのかなと思うので、そこは仮説を立てることができると思いますが、最初の段階で仮説を立てるということはあまりないですね。

ーー他にもいろいろ分析をする会社はたくさんありますが、中山さんが株式会社ENJOY JAPANとして「ここは負けないよ」みたいな強みやポイントって何かありますか?

中山さん:私たちがどれだけのデータを集められるかということに掛かっていると思っていて、私たちが分析するときに「おそらくこうだろう」と考えていたものが、次の機械に当てはめてみたときに違ったみないな、失敗と成功の繰り返しをして成功に導く、そういった繰り返しをたくさんできるということが私たちの強さであると思っています。

海外マーケティングの戦略の立て方について

ーー「外国人向けに商品を売れるようにしたい」とか「越境ECでこれが流行っているからこれを売りたい」というお問い合わせをよく頂くことがあると思うのですが、「とにかく施策をやりたいから」「とりあえずやってみよう」という視点で根幹のない施策になりがちだと思うんですけど、どういった戦略を立てていったらいいですか?

中山さん:インバウンドと越境ECを結構一括りに考えてしまっている方も多くいらっしゃいますが、「中国向けだから」という考え方から来るのだと思うのですが、そこはまず分けたほうが良いと思います。

インバウンド・越境EC・一般貿易

例えば、アフターコロナの今のタイミングでまだ中国のことはあまりやっていないという段階ならテストマーケティング的な意味合いを含めてインバウンドのマーケティングから入ってみて、こういう対象者に対して、こういうプロモーションをやってみましょう」と、そこからどうやら中国人にしても韓国人にしても外国人にすごく人気だという風になったタイミングで「じゃあ越境ECやってみよう」とか本当にすごいなら「一般貿易をやってみよう」という話になると思います。

そのようにステップを踏んでやっていく、戦略の前の前提というステップとして良い方法だと思います。

ポイント
  1. インバウンドマーケティング
  2. 越境EC
  3. 一般貿易

まずはインバウンドから入るべき理由

ーー越境ECも一般貿易も両方始めようと思うと時間もお金もたくさん掛かりますよね。時間もお金も掛けず、まずはマーケティングできるとなると、やっぱり「インバウンド」になってきますよね。

中山さん:そういった意味では日本に来ていただいているので、来ていただいている方に対してどう知ってもらうかということだと思うんですよね。越境だと現地にいかないといけないし、現地でコミュニケーションを取らないといけないしで、もっというと競合がたくさんいるので、そこにわざわざ行って勝つのは相当大変だと思います。

ーー結構忘れがちになってしまうんですけど、越境ECの競合って中国のブランドと日本のブランドだけで考えがちですけど、実はそうじゃないですよね。

中山さん:ヨーロッパもいますし、アメリカもいますし、オーストラリアもいます……、世界中が中国のマーケットを狙っていますからね。

だとすれば、日本に来てもらう時点で日本に興味があるわけじゃないですか?その方に刺さらなかったら越境ECをやっても刺さらない可能性が高いですよね。そういった視点でみてもらえると、インバウンドはある意味「テスト」として最高なんじゃないかと考えています。

もう「メインドインジャパン」は通用しない

ーー普段、私もお客様とお話しをしていて2019年のコロナ禍前の状況とアフターコロナである今の状況でやっぱり環境は全然違うので再度テストを行うなら、『インバウンド→越境EC→一般貿易』 という流れはとてもイメージしやすいですよね。

中山さん:アフターコロナ後の戦略の話で言うと、おそらくコロナ前と違うのは「メイドインジャパンだから売れる」というのは、もうちょっと違うのかなって思っていて、「とにかくうちの商品は日本で作ってるんです」というメイドインジャパンを売りにする考え方はもう前提がやっぱり違っていて、今は敵が有象無象にいますので戦略なくしては売れないものは突発的に売れたとしても継続的に売るのは難しいですよね。

「メインドインジャパン」が特に通用しない業種:化粧品業界

ーー具体的にどの業種が一番「メインドインジャパン」が通用しなくなってきていますかね?

中山さん:化粧品業界は間違いなくメインドインジャパンが通用しなくなっていると思います。コロナ前だとやはり化粧水やスキンケア商品はメイドインジャパンがある意味不敗神話みたいなPRになっていた感じはありましたけど、もう全くそういう時代ではないですね。

やはり他社と何が違うのか?成分が違うのか?もしくは企業が持っている資産が強いのか?そういう要素が明確にないと最終的にお客様の購買に繋がらないんじゃないかと思います。

参考にしたい化粧品ブランド

ーーでは、中国以外の化粧品ブランドとかでこの国のブランドは強いな、ちゃんと考えてやっているなって思える参考となる化粧品ブランドとかってありますか?

中山さん:個人的にはタイのメイクブランドは、対中国戦略という意味ですごく考えていると思います。

もともと日本系のメイク商品が中国で可愛らしいとか淡いとかで流行っていましたが、他方で、単価が高いにも関わらず欧米ブランドがやはり強かったんですね。そこにちゃんとターゲットを絞って、その単価レンジにどうやって自分たちが入ろうかと考えたタイのブランドが日本のマーケットを取りに行くアクションではなく、自分たちが欧米ブランドの代替になろうと考えたんですよね。中国の消費者はパキっとしたメイクが好きであるという傾向から戦略を持ってちゃんと取りに行っている動きを見ていて感じますね。

結果的に、欧米と東南アジア系のブランドで日本風な可愛らしい市場自体を奪っていっている感じで、総合的に日本のメイクブランドのパイが小さくなっているようにデータを見ているとわかります。売上のデータを追っかけていると目に見える形で変わっていくのがわかるんですよね。

訪日インバウンドで勝つために

ーーここ最近、越境ECのご相談よりもインバウンドの戦略、攻略の仕方、そういったお問い合わせが多いのかなと感じています。中山さんが思う訪日インバウンドで日本の企業やブランドが勝つポイントや戦略上気にしたほうが良いことなどあれば教えてください。

中山さん:インバウンドマーケティング自体が成熟していなくて、広告会社の人たちもあまり分析しきれていないんじゃないかなと広告会社出身の私としてもすごく思っていて、急にAISASとかAIDMAみたいなこと訪日インバウンドでもはめ込んでご提案されている提案書をたまに拝見することがあるんですが、もっと複雑で非合理的なものだと思っています。

AISAS/AIDMA

どちらも消費者の購買行動プロセスを説明する代表的モデル。AIDMAは1920年代にはすでに提唱されていたが、インターネットの登場によるプロセスの変化を加味し、21世紀に入りAISASが提唱された。

認知の癖を考え分析する

中山さん:訪日旅行者の購買の意思決定プロセスは、非合理的と言ってしまうとそれまでなんですけども、これは行動経済学や行動心理学でもいろんな方が述べていることなんでが、ひとつは「認知の癖」というのがあって、これが一番訪日インバウンドに当てはまるんじゃないかと思っています。

ポイント

人間は「認知の癖」により「非合理な意思決定」をとる

ある一定まではすごく合理的に考えていても、あるラインを超えると非合理的になるという考えが僕はあって、例えば「大阪に行くか?東京に行くか?」みたいなことはいわゆる「タビマエ」に該当しますが、皆さん非常に合理的に検討されているイメージがあります。例えば「江戸城が観たい」とか「桜が観たい」のような希望があって、でも買い物もしたいなど総合的に自分自身のやりたいことを考えて、その結果東京がいいとか、だったら東京の新宿に泊まったほうがいいみたいなことを決めていきます。他にも百貨店がある、ドラッグストアがある、こういうホテルがいいとか含めて合理的に考えます。

タビマエ・タビアト

ただ、これは大阪の梅田エリアを分析したときに合ったケースで、大阪の梅田に泊まろうというところまでは合理的に考えているんですけど、じゃあどこでどう買い物をしてここで買おうと決めるファクターは合理性があったかというと、なかったんですね。

そこはまさに「システム1VSシステム2」という認知の癖の概念に当てはまると思っています。

システム1VSシステム2

人間の判断(選択)の過程において、合理的な判断(選択)と非合理的な判断(選択)が起きており、人間の情報処理には歪みがあり、「認知の癖」が生じる。

あるところまでは合理的に考えているけど、最後にここで買おうとなったときに、「なんでそこで買ったんですか?」と理由を聞くと、「みんなそこで買っているから」とか合理性が急になくなるんですね。それを行動経済額で「アフェクト」というのですが、「淡い感情」というのがあって明確な理由があるわけじゃないけども、「みんながここがいい」と言っているからなんとなく「ここがいい」と思ってしまうことがあって、最終的に「じゃあ梅田で買おう」「阪急百貨店で買おう」そういうことがあるので、やはりしっかり分析する必要はありますね。

アフェクト(淡い感情)

明確な感情ではなく、淡い感情は人(ヒト)の成長過程において形成される価値観であり、(国民性・人によって)価値観がことなることで意思決定が異なる。

ーー日本人もAIDMAとかAISASとかきれいに当てはまる人たちばかりじゃないですよね。むしろキレイに当てはまらない人のが多いですよね。

中山さん:日本国内で日本人が購買活動するのであれば、AIDMAとかAISASとかってまだ捨てたもんじゃないと思っていて、冷静にその場所にいるから比較検討ができると、それで高揚していない、常に同じ場所にいるから平常心でいますけど、訪日旅行者って異国の地に来ているのでマインドが高まっていたりするんですよ。つまりエモーショナルな部分が寄与しやすい状況下で見るものすべてが今までと違うから興奮している状態になっている可能性が高くて、となるとさっき言った非合理的なメカニズムが動くタイミングが多いのではないかと考えています。旅行に行くとお財布の紐が緩むとかそういう感覚ですよね。

あと行ってみたかったところに来ているので、そこで何かをしたいっていう行動が伴ってしまうことは通常時より起こりやすいと思うんですよね。そこをちゃんと突いて行ってAIDMAでもAISASでもなく何が起きているのかということを見ていくことが非常に重要なことだと思っています。

ーーそういう一人ひとりの論理的に見える部分と、エモーショナルで見えてくる部分というのは冒頭のお話のように「Aさんはこういう風に動いた」「Bさんはこういう風に動いた」みたいな行動を一つずつ照らし合わせながら概念化していくとトータルの戦略が見えてくるということですね。

中山:Aさんには合理的な人間のモデルが当てはまったけど、なぜかBさんにはその合理性が見えない。「なぜだろう?」という風に考えていくんですよ。そうしたらBさんはどういう購買プロセスを踏んだのか?AさんBさんは似ているけどCさんは違うなとか、Dさんを見たら実はBさんと似ているなとか、どうやらここには合理性と非合理性が共存するんじゃないかということが見えてきて概念化できるということになるんじゃないかなと思いますね。

行動を正当化したくなる『理由バイアス』を理解する

ーーちょっと前まで「タビマエ」「タビナカ」「タビアト」みたいなざっくり3つで分けて考えることはコロナ前はみなさんよくやられていたと思うんですけど、今はもうそんなものじゃ駄目だと……。

中山:すごく複雑で、もう一つご紹介すると、僕が勝手に「理由バイアス」と呼んでいて、専門家の方たちがどう呼んでいるかわかりませんが、外国人が日本に旅行したときは、「買い物したい」「せっかく日本に来たから何かしたい」というのがまずあるわけです。そのときに自分を正当化したくなるんですね。その行動することを正当化したくなるので、「なんでこれをやるのか?」という為の理由を自分が作ることを理由バイアスと言っているんですけど。

理由バイアス

最終的な購買決定においては、何かしらの理由を無意識的に欲してしまう。
また、当該理由の正確性ではなく、自らが納得しうるかに値するかどうかである。

明確に理由があるから行動するのではなくて行動したいための裏付けとして自分に理由を作ってあげる。例えば、Aさんがタビマエにみんなに聞いたら「Xっていう商品がいいよ」と、それで検索してみたらYという商品もあるらしい、じゃあXかYを買おうかなと言って店舗へ行くと、そうすると今度は店員さんが「Zがいいんじゃないですか?」とお勧めされると、そうすると「店員さんがZがいいと言っているんだったらZも買おうかな」と思うか「Zだけ買おう」という自分が買うことに対する正当性をその瞬間持っていきたくなる。でもホテルに戻ると「やっぱりX買っておけばよかった」みたいになって冷静になって、またそこに合理性が働いて「やっぱりXにしよう」とか「XとZを買って帰る」とか、そういうことが起きてくるじゃないかなと思っています。

ーーいやぁ、複雑ですね!

中山さん:本当に複雑ですよね。商品ごと、狙う対象国ごとに細かく見ていって戦略を策定する。今こそ重要なことだと思いますね。

海外マーケティングの具体的な分析方法について

ーーでは、もう少し具体的な分析方法について深掘りしていきたいと思います。先述では、多くの事象データを集めることが強みであるとお聞きしましたが、実際にどのような工夫をして事象データを集めているのか?教えていただけますか?

中山さん:現在、データ収集にはSNSが最も有効だと考えています。私の場合は、アンケート調査なども行いますが、主に各国のSNSからカテゴリーやキーワードを絞って情報を引き出しています。

ミーエルを活用してインフルエンサーの影響力・投稿の人気度・具体的なデータを得る

中山さん:しかし、SNSの情報収集や分析勉強しようにも専門用語などもあったり簡単なものではありません。お客様もどのように収集すればよいか理解や判断するための材料が少ないので大変だと思います。

だからこそ私たちが情報を提供しなくても、みなさんが情報を取得できる環境を構築できるように、『ミーエル』という分析支援ツールを開発しました。

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ミーエルを使うことでまだ情報を収集できていないお客様でも効率的にたくさんの事実を見ることができます。ミーエルを活用して、インフルエンサーの影響力や投稿の人気度など、具体的なデータを得ることができます。「ここのインフルエンサーがどれだけ影響力があるのか?」とか「ある投稿はどれくらいいいねがついたのか?」などたくさんの事実をとることができるんですね。みなさんに使っていただいて事実をそこからたくさん取っていただきたいなと思っています。

ミーエルの活用して学んだこと

ーーミーエルを使っているうちに情報を取っていくことに慣れていくのかなと思うんですけど、中山さんが今まで積み重ねてきた中で「こういうことをやっていたら分析のレベルが上がったな」「自分ができるようになったな」と思ったことや学んだことを教えてください。

中山さん:参考になるインフルエンサーさんをお一人でも見つけるとすごく勉強になると思います。

ポイント

参考になるインフルエンサーを一人でも見つける

例えば、ある一人のインフルエンサーを注視していると、急にトンマナが変わったり、投稿スタイルが変わるタイミングがあるんですね。

僕が見ていたインフルエンサーさんを例にすると、もともと商業施設を紹介する方だったんですけど、ずっと同じような内容を投稿しているなと思って見ていたんですけど、あるとき急に日本語の授業みたいなことを始めたんですよ。ハッシュタグも元々は「#百貨店」ってなっていなのが急に「#日本語学習」に変わっているんです。

そこで中国人に向けて何をやるのかなと思ったら「百貨店で使える日本語」みたいなのをやり始めたんですよ。

各フロアごとに紹介していて、例えば化粧品フロアだったら「試せますか?」みたいなことだったり、洋服フロアだったら「色違いはありますか?」「サイズがちょっと違う」みたいな、各フロアで使える日本語が紹介されていて、面白い名と思ったのは、それをしながら百貨店にそういうブランド商品が入っているかということを伝えているんです。それで実際に行ってそのやり取りを公開しているの見たんです。

そのとき「視点を変えるってこういうことか!」と思いながら分析してみていました。

ーーそのインフルエンサーさんが自分でマーケティングを行っていて、数字が少し落ちてきたのでテイストを変えて努力をしようとしている跡が見えますね。

中山さん:やはりミーエルを使うと過去の投稿と現在の投稿の中央値とか様々な情報が出てくるので、それらを照らし合わせながら分析できるのはとても勉強になりました。

国や地方自治体のインバウンド施策について

ーーインバウンドという目線で考えると、やはり国としてというか、観光庁とか地方自治体が海外の方をたくさん呼び込むための施策で企業以外の部分の動きってすごく大事だと思うんですが、中山さんは普段観光庁や霞が関のようなところもよくお話をされていますよね。そのお話の中で「こういうところがいいところ」「こういうところが改善が必要だな」それぞれあると思うんですけど、国や地方自治体のインバウンド施策についてどのようにお考えですか?

中山さん:おそらく今、東京・大阪・京都・札幌・福岡などの人気のスポットから地方にどんどん人を分散させたいと考えていて、それがオーバーツーリズムを解決できるという考え方があります。ただクローズドの場で上の方々と話すと「でも、そうはならないよね」という風に内心見ています。

やはり「日本に行きたい」と思っている外国人観光客がどこに行きたいか?と考えたらやはり魅力のあるところに行きたいでしょうし、急に知らない県に行くかというと行かないと思いますよね。僕はもうそれはしょうがないと思っていて、「パリに行きたいのに違うところ行け」と言われたら困りますよね。「東京へ行きたい」「大阪へ行きたい」というマインドを変えるのはなかなか難しいことです。

ある一定まではできると思いますけどそれ以上は難しいと思っていて、民間側もどれくらい一極集中してしまうところに対して対応力を高めていけるのか?というところが勝負になるのかなと思っています。

民間企業は観光庁の戦略をちゃんと見ていく必要があります。

ポイント

政府の施策・戦略を把握した上で計画を立てる

どうしても民間企業のインバウンドの担当の方とお話をすると、自分たちのことだけでもういっぱいいっぱいなわけです。政府の動きが見れる余裕もなかったり、相談する術もなかったりするんですよね。

「民間企業の方がもう少し勉強をしないといけない」という感覚はありますね。

民間企業は国のデータを活用できていない

ーーせっかく国が「力入れてきたい」と言って税金を使ってインフルエンサーを使って施策を展開している事実はあるのでそこに民間企業が乗っからない手はないと思いますね。

中山さん:結構、観光庁も細かいデータを取っていて、僕でら参考にするぐらい様々なデータを公開しているので、それらを自ら学んで取りにいかないといけないと思います。

政府がこれ だけ一丸となって外国人を受け入れるんだと、日本の経済の1つの柱にインバウンド施策をするんだってあれだけ言ってるのに、そういった積極的な施策を広げていこうしなくてはいけない広告代理店や広告主の皆さんが「いや、ちょっと政府の方たちのことよくわからないんだよね」って思われているのが多いのが実情です。国内経済のど真ん中になるんですから国内のマーケティングはとても深く調査してあれだけ戦略描いて、あれだけ広告を投下しているのに「もったいないな」と思いますね。

ーーよく言われるのが「海外のことわからないから」と思う担当者さんも多いと思うんですけど、もちろんわからなくて当然なので、コツコツでも良いので避けずに国と一緒に学んで行ったりとか知識をつけていただいて、一緒に盛り上げていくことができれば良いですよね。

2024年の訪日インバウンドの展望について

ーーでは最後の質問です。中山さんは2024年の訪日インバウンドはどうなるとお考えですか?

中山さん:インバウンド成功する企業と成功しない企業がもう真っ二つに分かれると思って見てます。それはもう広告予算があるなしではなくて、「どれだけ戦略をちゃんと組めたか?」ということがポイントになってくると思います。

インバウンド成功する企業と成功しない企業

「なんかヒットしちゃいました!」という時代も来ないと思っていて、どう狙って取りに行くかという戦い方を企業ができるかできないか、戦略をちゃんと狙って、この国でこんなポジショニングを取りたいんだと明確にしないといけません。やっぱり訪日インバウンドでの競合もちゃんといるので、この中でどうカットイン するか?そこをちゃんと狙うことのできる企業と、「とにかく何か売れるものないですか?」「とにかく売上あげたいんです!」という企業の二つに分かれるのではないかなと考えています。

戦略の立案や分析に基づく仮説作りの重要性

ーー確かにコロナ前、「爆買い」っていう言葉が流行ったときみたいに、「なんか知らないけどすごく売れる」みたいなのって多分おっしゃる通りもうないのかなと私も思います。2015年頃と比べると中国では日本の情報を簡単に取れるような環境にもなっていて、たくさんの日本の商品が中国でも流通できるようになってるし、戦略をしっかり組むことはすごく重要ですよね。戦略が明確になっていればインバウンドが成功したら越境EC、越境ECが成功したら 一般貿易みたいなステップを踏んでいく上で長い目で見た作戦が立てやすいですよね。

インバウンドの経験をもとに戦略を立てる

中山さん:結局、消費者が一緒ですから、彼らが自国に戻ったときに、どういう風に届けるかという戦いになりますよね。つまり消費者のマインドは分析はある程度できているので、そうすると越境ECをやるときに「何を強みに売ればいいんだっけ?」とそういった考え方もできるわけなんですね。

ゼロベースからの仮説じゃなくて、実績を持った仮説で挑める、訪日インバウンドは安価にテストができるとい意味でとても良い施策だと思います。

ーー戦略の立案や分析に基づく仮説作りの重要性を聞いて、改めて学びが深まりました。みなさんにとっても、参考になったのではないかと思っております。この話はこれからも役立つはずですので、ぜひ外国市場でのマーケティング分析や戦略策定にお役立てください。中山さん、今日はありがとうございました。この話はこれからも役立つはずですので、ぜひ外国市場でのマーケティング分析や戦略策定にお役立てください。

株式会社ENJOYJAPANでは、中国をはじめとするさまざまな国での調査や分析、戦略策定の豊富な実績がありますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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