株式会社三越伊勢丹
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近年、訪日アメリカ人市場はインバウンドの中でも特に注目される存在となっています。円安の影響や日本文化への関心の高まりを背景に、北米からの旅行需要は力強い回復基調にあり、企業にとっても最重要ターゲット層のひとつです。本記事では、「訪日アメリカ人」「アメリカ人観光客の動向」「消費単価」「滞在 日数」「インバウンド対策」といった観点から、企業が押さえるべき最新傾向と具体的なアクションを整理します。
目次
訪日観光客へのマーケティングをお考えですか?
日本政府観光局(JNTO)が発表した訪日外客統計によると、2025年の訪日アメリカ人数は330万6,800 人となり、前年比でも21.4%増と過去最高を更新しました。
さらに、観光庁のインバウンド消費動向調査によれば、2025年の訪日アメリカ人旅行消費額は1兆1,186億円に達し、アメリカ市場として初めて1兆円の大台を突破しました。
訪日アメリカ人の特徴として、個人旅行(FIT)の比率が高く、団体ツアーよりも自身でSNSや検索エンジンを通じて情報収集し、体験を主体的に選ぶ傾向があります。
また、JNTOの訪日旅行誘致ハンドブック(米国市場)によれば、訪日旅行に関する期待内容は「日本食を食べること(99.4%)」が最も多く、次いで「ショッピング(88.7%)」「繁華街の街歩き(87.7%)」「自然・景勝地観光(71%)」の順となっています。
北米市場は「旅行そのものを自己投資と捉える」価値観が強く、価格よりも”体験の質”を重視する層が多いことが大きな特徴です。
インバウンド対策を設計するうえで、「どの時期に来るのか」を把握することは、キャンペーン実施や人員配置の最適化に直結する重要な情報です。
訪日アメリカ人の来訪は、大きく「夏(7〜8月)」と「春(3〜4月)」の2つのピークに集中しています。
2025年7月の訪日アメリカ人数は27万7,100人(前年同月比10.3%増)で、7月として過去最高を記録しました。続く8月も米国がスクールホリデーに合わせた訪日需要の押し上げ要因となり、8月として過去最高を更新しました。
アメリカの夏休みは学校によって異なりますが、おおむね6月下旬から8月下旬にかけて2ヵ月以上続きます。この長期休暇を活かした訪日旅行が集中するため、7〜8月は全国的にアメリカ人旅行者との接点が最も多くなる時期です。
企業にとっては、この時期に向けた英語対応の強化やSNS発信の事前準備が特に重要となります。
2025年3月は桜シーズンの到来とともに訪日需要が高まり、米国は単月過去最高を更新し、欧米豪市場の中でも米国が訪日外客数増加の主要な押し上げ要因となりました。
4月もイースター休暇の需要が加わり、春の桜シーズンが続く中、欧米豪では米国を中心に訪日外客数が増加し、4月の訪日外客数は単月として初めて390万人を突破しました。
日本の桜は、SNSやYouTubeを通じて世界中で注目を集めており、「一生に一度は桜を見たい」という動機で初来日するアメリカ人も少なくありません。
この2つのピークを踏まえると、企業が取り組むべき準備のタイミングは以下のように整理できます。
夏に向けた準備(5〜6月)→英語SNS発信の強化、スタッフへの英語接客研修、多言語メニューの整備
春に向けた準備(1〜2月)→「桜×体験」を訴求する動画コンテンツの制作や発信、予約システムの多言語化確認
繁忙期に後手を踏まないよう、ピーク時期から逆算した準備スケジュールを組むことが、訪日アメリカ人の取り込みを最大化するカギとなります。

訪日アメリカ人市場の魅力は、訪問者数や消費額の大きさだけではありません。初来日者が約60%を占める一方で、リピーター率は約40%という点も見逃せません。
10人のうち4人はすでに一度日本を訪れ、再び来日している計算です。
観光庁の「訪日外国人旅行者(観光・レジャー目的)の訪日回数と消費動向の関係」分析によれば、欧米豪市場では訪日回数による1人当たり旅行支出の大きな変化は見られず、初来日・リピーターともに高い消費水準を維持していることが示されています。
これはアジア市場とは異なる欧米豪特有の傾向で、「何度来ても、来るたびにしっかりお金を使う」客層であることを意味します。
日本政策投資銀行・日本交通公社の「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2024年度版)」によれば、欧米豪市場でもリピーターほど地方訪問経験率が高く、リピーターに向けた情報発信が地方への回遊促進につながることが示されています。
さらに同調査では、英米豪市場において地方エリアへの訪問意欲が高まっていることから、初来日、リピーターともに今後も増加が期待できるとされています。
「一度来てくれたお客様に、次回も選んでもらえるか」を意識した体験設計として、口コミを書いてもらいやすい仕掛けや、SNSでシェアしたくなる「ここでしかできない体験」の提供が、訪日アメリカ人市場における持続的な集客の鍵となります。
訪日アメリカ人の1人当たり旅行支出は、アジア圏の旅行者と比較しても高い水準にあります。その背景には、滞在日数・為替環境・消費行動の3つの構造的な要因があります。
アメリカから日本への渡航は、10時間を超える長距離フライトとなるのが一般的です。そのため、短期間の滞在よりもまとまった休暇を確保して訪日する傾向が強くなります。
JNTOのデータによれば、訪日旅行全体の滞在日数の平均は5.9日となった一方、アメリカ市場では8.2日となり、全体平均と比べて約2日程長い滞在となっています。
滞在日数が長くなるほど、宿泊・飲食・体験・買い物といった各費目での支出が積み上がり、消費単価の押し上げにつながります。
円安傾向が続く中、相対的に物価上昇率の高いアメリカと比べると、日本での消費はドルベースで「割安」に映りやすい状況にあります。
観光庁のインバウンド消費動向調査(速報)によれば、2025年の訪日外国人旅行消費額は前年比16.4%増の9兆4,559億円に達し、暦年として過去最高を更新しました。消費額の国別ランキングでも、米国は中国・台湾に次ぐ第3位に位置しており、欧米市場の中でも特に存在感が際立っています。
円安傾向が続いた結果、アメリカ人旅行者は価格に対する心理的ハードルが下がり、レストランでのワンランク上の食事や高価格帯ホテルの利用、ブランド品・体験型コンテンツへの支出を積極的に行う傾向が見られます。
近年は自身でSNSを活用して旅行計画を立てる旅行者の割合が増加しており、「ただ観光地を巡るだけでなく、本物の伝統や文化を体験したい」という志向が強まっています。
茶道、和菓子作り、書道、座禅、盆栽など、日本独自の文化体験サービスへの需要は非常に高く、特にアメリカ人観光客は旅行を人生経験の一部と捉える傾向があるため、価格よりも体験価値を重視します。

アメリカからの訪日旅行は移動距離が長く、また夏のピーク期にはアメリカの夏休みが2〜3ヵ月に及ぶことから、滞在日数は比較的長期化する傾向があります。
1週間以上滞在するケースも多く、東京・京都・大阪といったゴールデンルートに加え、地方都市へ足を延ばす動きも顕著です。
JNTOの市場動向レポートでも、北陸・中部・四国といった地方を組み込む旅程を提案するバイヤーが増加していることが報告されており、地方の観光事業者にとっても訪日アメリカ人市場は大きなビジネス機会となっています。
アメリカ人観光客は、旅行前の情報収集においてデジタルプラットフォームを強く活用します。観光庁の調査によれば、主な情報源は以下の通りです。
“best sushi in Tokyo”や”traditional ryokan Kyoto”など、具体的かつ体験志向の英語ワードで検索する傾向が強いのが特徴です。
旅行Vlogや現地体験動画を視聴し、「実際の雰囲気」や「価格に見合う体験かどうか」を確認してから予約・来店を決定するケースが多くなっています。
ハッシュタグ・位置情報検索で店舗や体験を”偶然発見”する場として機能。特に若年層・ミレニアル世代が旅行前に保存機能を使って訪問候補をリストアップする傾向があります。
星評価・英語コメント数が来店判断に直結します。「サービスの丁寧さ」「英語対応の可否」「予約のしやすさ」といった具体的な体験談が重視されます。
特に、YouTube旅行VlogやGoogleレビューは意思決定に強く影響します。写真だけでなく「実際の体験映像」が重要視されるため、動画コンテンツの整備は不可欠です。
また、英語レビューが少ない・英語対応が分かりづらいといった状態は、検索段階で候補から外れてしまう大きな機会損失につながります。
では、企業は具体的にどう動くべきでしょうか。単に「英語のメニューを置く」というだけでなく、旅行客の行動導線に合わせて以下の3つのステップで施策を設計することが重要です。
まずはGoogleビジネスプロフィールやSNSの英語化が必要ですが、情報は正確さ以上に「ワクワクするか」が問われます。
たとえば、15秒のInstagramリール動画で”店内の賑わい”や”職人の手さばき”を見せるだけでも、テキスト1,000文字以上の説得力を持ち、訪日客の来店動機につながります。
旅行計画の行き先として興味を持ってもらうためにも、SNSでの定期的な動画投稿や情報発信は必須です。
また、Googleビジネスプロフィールの整備においては、メニュー内容、営業時間、「ベジタリアン対応可」などの詳細情報を英語で充実させることが重要です。
英語レビューに対して英語で返信するだけで、「この店は外国人を歓迎している」という強力な安心材料になります。
アメリカの旅行者は公式サイトよりも他の旅行者の本音(口コミ)を信頼します。満足して帰るお客様に対し、「レビューを書いてくれたら一品サービス」といった直接的な依頼や、QRコード付きカードの提供など、英語での口コミが自然に積み上がる仕組みを現場で徹底しましょう。
レビューが蓄積されている店舗は「安心できる選択肢」として選ばれやすくなります。
どれだけ魅力が伝わっても、予約サイトが日本語のみだったり電話予約のみだったりすれば、予約のハードルは一気に高まります。
検索→比較→レビュー確認→動画視聴→予約、という一連の導線を意識し、多言語対応の予約システムの導入と、決済までオンラインで完結できる環境の整備が、最後の決め手となります。
多言語対応の予約ツールは「コスト」ではなく、機会損失を防ぐための「最低限のインフラ」と捉えるべきでしょう。
訪日アメリカ人市場は、消費単価が高く、滞在日数も長い魅力的なターゲットです。2025年の訪日アメリカ人数は330万人超、旅行消費額1兆1,186億円と過去最高を更新しており、今後もその勢いは続くと見込まれます。
彼らは”価格”ではなく”体験の質”で意思決定を行います。そして、その意思決定はGoogle・YouTube・Instagram・レビューというデジタルの導線上で完結します。
デジタル上で存在感を持てない店舗・施設は、存在していないのと同じと言っても過言ではありません。
インバウンド施策を検討する企業にとって、アメリカ市場への戦略的アプローチは大きな成長機会です。訪日アメリカ人の動向をデータと体験価値の両面から理解し、英語対応、デジタル発信、予約導線の最適化を一体で進めることが、今後のインバウンド競争を制する鍵となるでしょう。
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