大手製薬メーカー(一般用医薬品・ヘルスケア商品)
「店頭で選ばれる」から「訪日前に選ばれる」へ。メディア×インフルエンサー×広告の統合設計で、5市場の“旅マエ”に介入したインバウンドマーケティング
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イギリス(英国)は総人口約6,680万人を擁するヨーロッパ最大の日本語圏外市場のひとつであり、訪日意欲と実践力を兼ね備えた高品質な旅行者を多く輩出する国です。2023年の訪日イギリス人数は約32万1,500人と、2019年比で75.8%まで回復。とりわけ注目すべきは消費額で、1人当たり旅行支出は32万7,505円と2019年比で35.7%増、総支出額は1,050億円と欧米市場の中でも屈指の高消費力を誇ります。
この市場を際立たせるのは、単純な「量」の増加よりも「質」の高さにあります。イギリス人旅行者は、日本食や日本文化、歴史への深い関心を持ち、東京や大阪だけでなく、地方への分散傾向が他の欧米市場と比較して顕著です。加えて、ラグビーやスキーを通じた特定コンテンツとの強いつながりも持っています。本記事では、観光庁・JNTOの最新データをもとに、訪日イギリス人観光客の実像を多角的に分析し、効果的な集客・受け入れ施策を解説します。

イギリスからの訪日旅行者数は2014年以降6年連続で増加し、2019年にはラグビーワールドカップ開催の後押しもあり、ヨーロッパ市場で最多となる約42万4,279人を記録しました。2023年の32万1,500人は2019年比では75.8%にとどまりますが、これはワールドカップという特殊要因を除いた2018年比では96.3%に相当し、他のヨーロッパ市場と同等の回復ペースです。

10月にピークが集中する傾向が続いており、2019年の10月は突出して高くなっています(ラグビーワールドカップ開催の影響と見られます)。2020〜2021年はコロナ禍でほぼゼロ近くまで落ち込み、2022年後半から急回復して2023年には2019年水準に近づいています。
市場ポテンシャルの大きさは、英国全体の旅行行動にも表れています。人口約6,680万人に対して2019年の海外旅行者数は延べ約9,309万人に達しており、国民1人当たり年に1.4回以上海外に渡航していることになります。アジアへの遠距離旅行の筆頭として日本への関心は依然高く、今後の成長余地は大きいといえます。


訪日イギリス人旅行者は男性が70.2%、女性が29.8%と男性が圧倒的多数を占めます。東南アジア市場(インドネシア・マレーシア・タイなど)で女性比率が高いのとは対照的な欧米型の傾向です。男女ともに20代・30代の割合が非常に高くなっています。男性向けコンテンツ(アウトドア・スポーツ・日本酒・歴史・建築など)との親和性を意識したマーケティングが有効です。
訪日イギリス人は欧米旅行者に共通して個人手配・FITの比率が高く、概ね半数程度が旅行会社を利用しながら個人で手配します。同行者は夫婦・パートナーや友人グループが多く、東南アジア市場のような大家族旅行は少ない傾向にあります。観光目的では平均16〜18日間の比較的長い滞在が一般的です。
| 国籍・地域 | 平均泊数 | 全国比較 |
|---|---|---|
| 全国籍・地域平均 | 10.1泊 | — |
| 韓国 | 4.7泊 | 短い |
| 台湾 | 7.0泊 | 短い |
| マレーシア | 9.5泊 | やや短い |
| シンガポール | 9.2泊 | やや短い |
| インドネシア | 13.8泊 | 長い |
| イギリス | 16〜18泊(観光目的) | 非常に長い |
訪日イギリス人の観光目的での平均滞在日数は15.3日間(2023年)で、全国籍平均(10.1泊)を大きく上回ります。長距離フライトのコストを考えると長期滞在でのコストパフォーマンス追求が働くためです。この長い滞在期間こそが1人当たり消費額を押し上げる最大の要因となっています。
2023年の調査では初来日が61.3%、リピーター(2回目以降の来日)が38.7%となっています。インドネシア(初来日41.8%)やマレーシア(43.6%)と比較しても初訪問者の比率が高く、新規顧客獲得の余地が大きい市場です。一方でリピーター層も着実に存在しており、地方誘客やディープ・ジャパン体験へのニーズが高まっています。

イギリス人旅行者が訪日前に期待することの第1位は「日本食を食べること(77.5%)」、第2位が「日本の歴史・伝統文化体験(48.8%)」、第3位が「自然・景勝地観光(47.6%)」となっています。
これらの上位コンテンツには、他の市場と明確に異なるイギリス人特有の傾向が表れています。まず「歴史・文化への本格的な関心」です。東南アジア市場が「インスタ映え」や「非日常体験」を主目的とするのとは対照的に、イギリス人は神社仏閣・茶道・日本酒・伝統芸能(舞台・音楽)など、日本文化への「深み」に対する関心を示します。
また、「アウトドア・自然体験」への強い親和性もイギリス人の特徴です。ウォーキング・バードウォッチング・ハイキングが生活習慣の一部となっているイギリス人にとって、日本の山岳・森林・自然景観は大きな魅力です。さらに近年では「パウダースノーのスキー場」としての北海道や長野への関心が急上昇しており、スキー・スノーボード目的の訪日が欧米豪市場の中でも特に顕著です。
| シーズン | 時期 | 主な目的・特徴 |
|---|---|---|
| 春季(第1ピーク) | 3月〜4月 | 桜・新緑。訪日客数最多シーズン |
| 秋季(第2ピーク) | 10〜11月 | 紅葉・過ごしやすい気候。2019年はW杯特需 |
| 冬季(スキー需要) | 12月〜2月 | 北海道・長野のパウダースノー目的 |
| 夏季 | 7〜8月 | 比較的少ない。英国の夏休みはEU域内が主流 |
訪日イギリス人の来訪パターンには、明確な季節性があります。コロナ禍前のデータでは、「4月を中心とした春季」と「10月を中心とした秋季」の2つが繁忙期のピークです。イギリスの気候(日照時間が短く冬は寒冷)を反映しており、過ごしやすい気温の時期を狙って日本を訪れる傾向と合致しています。
一方、冬季(12月・1月)は、キリスト教人口が多いイギリスではクリスマスを家族・親族と自国で過ごす習慣が強く、訪日客数が少なくなっています。ただし、北海道や長野のスキー需要はこの時期に集中しており、スノーコンテンツへの注力は年間通して機会になりえます。
訪日イギリス人の際立った特徴のひとつが、地方部への高い関心と実際の訪問率です。宿泊旅行統計調査(観光庁)によると、2023年1月〜11月実績で、岩手・宮城・茨城・富山・石川・静岡・徳島などの滞在者数がコロナ禍前の水準を超えて大きく伸びています。2013年から2018年にかけて地方部での延べ宿泊者数の割合は1.5倍に増加しており、長期滞在が多いイギリス人にとって複数エリアの周遊は現実的な選択肢です。
また、2023年10月にジャパン・レール・パスが大幅値上げされたことで、パスを前提としない個別購入型の交通手段(地方航空・バス・タクシー・離島フェリー等)への関心が高まりつつあります。これは地方の交通事業者にとって来訪者獲得の新たな機会となっています。
旅行形態はほぼすべてが個人旅行ですが、概ね半数程度が旅行会社を活用しており、OTA(オンライン旅行代理店)の活用も高いものの、旅行代理店や大手ツアーオペレーターとの関係維持が依然重要です。
情報収集チャネルとして最も役立てられているのは「口コミサイト(39.5%)」で、次いで「宿泊施設ウェブサイト(27.0%)」、「日本在住の親族・知人(26.4%)」、「自国の親族・知人(25.6%)」、「旅行ガイドブック(19.7%)」となっています。Tripadvisor(40.9%)やLonely Planet(20.3%)が情報収集の中核を担っており、信頼性の高い旅行情報サイトへの評価が高い傾向にあります。

DataReportal「Digital 2024 UK」によると、イギリスの人口6,970万人のうちSNSアクティブユーザーは5,500万人(79.7%)に達しており、インターネット普及率は97.8%とほぼ全人口がオンライン環境にあります。
最も広いリーチを持つのはYouTubeで、5,550万人(人口比79.7%)が広告到達対象となっており、すべての所得層・年齢層に届く動画インフラとして定着しています。「流し見」が情報収集の主流となった今、テレビに最も近い存在感を示していると考えられます。
特筆すべきはRedditの急拡大です。広告リーチは4,580万人(65.7%)に達し、アルゴリズム主導のコンテンツ疲れを背景に、専門コミュニティへの信頼が再評価されています。旅行・ガジェット・金融など特定テーマでの口コミ形成力は強く、「信頼できるコミュニティ情報」を求めるユーザー心理と合致しています。
LinkedInは4,800万人(68.9%)とビジネス特化プラットフォームとしては異例の普及率を誇り、リモートワーク定着後のキャリア意識の高まりを映しています。Meta社の3つのプラットフォームでは、Instagramが3,550万人(50.9%)で前年比9.2%増と最も伸びており、20〜30代のビジュアル消費を牽引。Facebookは3,880万人(55.6%)と地域コミュニティ・情報拡散の軸として、Messengerは2,570万人(36.8%)と連絡ツールとして、世代ごとに役割分担しながら幅広い世代をカバーしています。
若年層が最も多くの時間を割いている媒体がTikTokです。18歳以上で2,680万人(39.3%)、前年比12.5%増と高成長を続け、エンターテインメントの主役として可処分時間を大きく取り込んでいます。Snapchatも2,390万人(34.3%)で安定しており、開封頻度の高さから若年層への「ながら接触」を支えています。
SNSを利用することによって、人口の8割にリーチすること自体はもはや難しくありません。限られたSNS利用時間の中で、平均6.2プラットフォームを使い分けるユーザーに対し、どの場でどの文脈で接触するかを設計することが、次のマーケティング競争の軸になっています。

観光庁「訪日外国人消費動向調査」(2023年)によると、訪日イギリス人の1人当たり旅行支出は327,505円で、2019年比で35.7%増と大幅な伸びを見せています。費目別では宿泊費が最も高く149,769円(45.7%)を占め、次いで飲食費69,699円(21.3%)、交通費46,803円(14.3%)となっています。
2023年のイギリス人訪日客による旅行消費額は1,061億円で、ラグビーワールドカップが開催された2019年の999億円を上回り、過去最高を記録しました。訪日客数が2019年比75.8%の水準にとどまる中でも消費額が最高値を更新した背景には、1人あたり支出の大幅増加(2019年比135.7%)が寄与しており、「少数・高消費型」の市場特性を端的に示しています。
ここまでのデータをもとに、訪日イギリス人観光客向けマーケティングの重要ポイントをまとめます。
イギリス人旅行者は、日本の歴史・伝統文化に対して深い関心と本物志向を持っています。訪日動機の第2位(48.8%)に「歴史・伝統文化体験」が入っており、茶道・日本酒・剣道・能・歌舞伎などの伝統コンテンツは、単なる「体験」ではなく「学びと理解」を求めるイギリス人旅行者に強く刺さります。英語での文化解説・ガイド付きツアー・ストーリー性のある体験プログラムの充実が集客に直結します。また、日本酒は特にイギリス市場で他市場より際立って高い関心が示されており、酒蔵見学・日本酒ペアリングディナーといった特化コンテンツは高単価商品として成立します。
ウォーキング・ハイキング・スキー・バードウォッチングが生活の一部となっているイギリス人にとって、日本のアウトドア体験は強力な誘客コンテンツです。特に北海道・ニセコ・富良野、長野・白馬・野沢温泉などのパウダースノーは、欧州のスキーリゾートとの差別化ポイントとして英語圏での認知が急速に広がっています。スキー滞在と地方温泉・食体験を組み合わせた「スノー+カルチャー」型パッケージは高い訴求力を持ちます。
平均16〜18日という長期滞在は、地方誘客の最大の追い風です。東北(岩手・宮城・青森)、北陸(富山・石川)、四国(徳島・高知)、九州(大分・宮崎)など、コロナ後に訪問者がコロナ禍前を超えて伸びた地域での受け入れ態勢強化は、先行者利益を得る好機です。英語対応のコンシェルジュ・案内サービス、地方交通の英語情報整備、地元食材・料理体験プログラムの充実が特に効果的です。
イギリス人が最も信頼する情報源は口コミサイト(39.5%)であり、TripAdvisorへの施設・観光スポット登録と英語レビューの獲得は基本中の基本です。Lonely Planetのウェブサイト・アプリへの情報提供や掲載依頼も、地方観光地にとって国際認知度向上の有効な手段です。Redditのr/JapanTravelコミュニティは英語圏旅行者の情報交換の場として機能しており、SNS(Instagram・TikTok)での発信は補完的なチャネルとして位置づけ、ビジュアル訴求が強い自然・食・伝統コンテンツに絞った英語コンテンツを発信することが効果的です。
訪日イギリス人の繁忙期は「4月中心の春季」と「10月中心の秋季」の2つが明確です。この2つのシーズンを軸にした広告出稿・旅行会社向けプロモーション・英語コンテンツの更新を前倒しで実施することが重要です。冬季については、スキー目的の訪日客は12〜2月が主要シーズンとなるため、スノー・コンテンツはこの時期に集中したプロモーションが有効です。
イギリスの旅行市場では、個人旅行であっても旅行会社・ツアーオペレーターを通じて手配するケースが約半数存在します。ロンドンを拠点とする大手ツアーオペレーター(Kuoni・Cox&Kings・Audley Travel等)や日本専門旅行会社との商談・FAMトリップの実施は、安定した送客につながります。ジャパン・ハウス・ロンドンとの連携によるプロモーションイベントや、英語パンフレットの整備・配架(月間約6,300部が消費)も見落とされがちな重要施策です。
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