中国で行動制限が解除されてから最初の大型連休である「国慶節」に日本を訪れた人はどこに行き、何をしていたのでしょうか。月間アクティブユーザー2.6億と絶大な人気を誇り、旅行に関する投稿も非常に多いため旅行先の情報収集にも広く使用されている、中国版インスタグラムの「小紅書(RED)」をクローリング解析してみました。

そこから見えてくる現在の中国人観光客の動向をもとに、今後、適切なインバウンド施策はどのように行っていくべきなのかを考えていきましょう。

◇小紅書(RED)解析概要(CSVデータ 非公開)
  • 調査元:株式会社ENJOY JAPAN
  • 抽出対象:中国SNS キーワード抽出
  • 対象期間:2023年9月16日から10月4日まで(国慶節)
  • 抽出条件:日本旅行(表示対象のみの投稿に限定)
  • 抽出ワード数(延べ数):延べ50,000ワード程度(関係性が低いワードは排除 例:処理水などは抽出対象外)
  • 分析方法:エリア・スポット名となるワードのみ加工編集、表示順にて2次処理

■関連ワードTOP50

■小紅書(RED)解析データから読み取れること

「日本」「旅行」「旅游」などのビックワードの次には「東京」「京都」「大阪」というワードが並んでおり、大都市圏を中心に訪日中国人が集まっていることが分かります。

また、「酒店(ホテル)」「机场(空港)」「美食(グルメ)」「交通」など、日本の有名な観光地だけではなく宿泊施設やその土地で食べられる日本の食事など複合的に検索されていることが分かります。

コロナが落ち着いて久しぶりに日本に旅行に行くとなると、やはり日本の良いところの全てを味わいたいですよね。ですので“総合的”に魅力があるエリアが必然と強くなります。

ここでいう”総合的”というのはデータから読み取れるような、観光場所(地域)+衣食住が満遍なく充実しているという意味です。

では、具体的に観光情報における「衣食住」について紐解いていきましょう。

■観光情報における衣食住

まずメインとなる観光スポットです。こちらがないとそもそもの旅のきっかけが生まれないため、目的地として各地域の名所や施設の情報はとても重要です。

衣というのは、買い物です。爆買いという単語を以前よりは聞かなくなったものの、旅行先では買い物はしたいものですよね。化粧品にしても、ブランドバッグにしても、医薬品にしても、日本旅行において買い物はかかせません。

次は、食です。「日本食」というのはやはり日本旅行を代表する魅力の一つですね。お寿司やラーメンなど人気な食べ物はたくさんありますが、日本酒や居酒屋など、”THE日本食”を味わえる場所があるスポットはポイントが高いです。

観光情報における住とはホテルや交通手段です。訪日中国人によって旅行の目的は様々ですがホテルも重要な役割を担います。

おすすめの観光場所から便利なのか、帰りの道順的に良いのか、せっかくなら素敵なホテルに宿泊したいのか・・・理由は様々かと思いますが、訪日客のニーズにあった宿泊施設があり、交通の利便性が明確な場所は旅行の選択肢として選ばれやすくなります。

■観光庁のデータとの比較

図6 ※JNTO 訪日外客統計より
図7 ※観光庁 2023年10月訪日外国人消費動向調査より

2023年9月現在、国別の訪日観光客を見ると、韓国・台湾に続いて中国は3位に留まっています。ですが、国別の消費の割合を見たときに中国は2,827億円と全体の2割以上を占め、1位となっています。また、中華圏の訪日旅行者の費用別構成比を見てみると、消費の大半は上記に説明したような買い物・食事・宿泊や交通が占めているのです。

■密かに増えている「一人旅」

これらの情報はコロナ前にもありましたので、今回はコロナ後で注目したい特徴についてお伝えをしていきます。

その特徴とはズバリ「一人旅」です。まず一番左の投稿は、一人で熱海をぶらりと訪れたことを示しています。まさに日本に住んでいる方の土日みたいな過ごし方ですね。

また、真ん中の投稿は、スケジュールを決めずに気ままに見たいものを見て、食べたいものを食べ、というように一人旅の良さを示している投稿ですね。そして、一番右の写真は、鎌倉と伊豆をランニングしていることを示している投稿です。

日本に旅行に来た中国人ですが、ランニングをしながら観光をするという新たな手法ですね。コロナ前には見受けられなかった、一人でゆっくり気ままに、決められたスケジュールに縛られることなく、日本を楽しみたいというニーズが、小紅書(RED)を見ても傾向として多く見られるようになっており、今後もより強くなってくるのではと思っています。

このような方々は、まだまだ少数派でありますが、今後は、観光とは人それぞれの価値観の中で形成されていくのかしれませんね。

■オーバーツーリズムの問題

特定の観光地において、訪問客の著しい増加によって地域住民の生活や、景観等に対して限度を超える負の影響をもたらして問題となっているオーバーツーリズムですが、この問題も”総合的に”観光客が満足できる観光地が、日本の中で一極集中してしまっていることが原因です。

なぜ少数のエリアにこれだけ人が集中してしまうのかというと、やはり人気の場所の情報のみがSNSに溢れており、その情報をみた人がその場所に訪れたいとなり、観光客がまたSNSに投稿することでさらに次の観光客を呼ぶ・・・という現象がSNSを中心におきているのでしょう。

だからこそ、今後は地方も同じように観光情報を「適切なメディア」で「適切な内容」の情報発信をしていく必要があります。では、どのようなメディアを選んでいったら良いのでしょうか?

■適切なメディアとは

※図11 観光庁2019年年次報告書より抜粋

こちらは訪日中国人が旅行情報を取得するための手段です。旅行本やブログなどではなくSNSから主に情報を得ていることが分かります。

また、そのSNSからは本記事で取り上げているような「衣食住」に関する投稿が役に立ったとされています。

またSNSの中でも中国人において、観光情報を取得するSNSでは何かを調べる為に、弊社では2022年10月と2023年3月に中国人のSNS利用状況のWEB調査を行いました。

SNSの中でも小紅書(RED)を利用して情報を得ている中国人がほとんどということが分かります。

この調査をもとにすると、小紅書(RED)を中心に観光情報をアップしていくという施策・活動がマストで、内容としては衣食住+観光場所についての情報を、満遍なくアップされていることを意識して展開していくことがポイントですね。

多くの企業が様々な方法でSNSマーケティングを活用しています。しかし、SNSプラットフォームは多種多様に施策が存在しますし、訪日中国人をターゲットとすると台湾や香港など他の中華圏とは異なるSNSのため、なかなかうまく活用できていない企業が多いのではないでしょうか?

適切なSNSを活用し、いち早く中国のトレンドを把握して実施することがプロモーションを成功させるカギとなります。ぜひ中国SNSマーケティングでお悩みがございましたらお気軽にご相談ください。