インバウンドの再開に伴って、中国人観光客に最も効率的にアプローチができる手段として、小紅書(RED)や抖音(Douyin)に企業アカウントを開設して運用をする企業が増加しています。
社内の中国人担当者が運用をしたり、当社のような代理店に運用を委託するなどして情報発信をするなどの形がありますが、いつの間にか中国の著作権を侵害してトラブルになっているケースが増加しています。
また、恐ろしいことに自社で運営をする企業アカウントだけでなく、KOL(インフルエンサー)の投稿でも企業側に著作権侵害の責任を問われる場合もあります。
特に日本企業は狙われることが多いので、今回のコラムでは著作権侵害となる事例やプラットフォームの規約について紹介します。

中国SNS公式アカウントが著作権を侵害するケース

皆様の企業やブランドアカウントが、いつの間にか中国の著作権を侵害してしまっていませんか?

え?うちは大丈夫ですよ。ちゃんとSNS内に登録されているフォント、絵文字や音楽を活用して投稿していますよ。と思った方は要注意です。著作権侵害をしている可能性が非常に高いです。

最近はSNSプラットフォーム内の機能や編集用アプリを利用して投稿用の画像や動画を作成する方が多いと思いますが、小紅書(RED)や抖音(ドウイン)に入っているフォント、絵文字や音楽などは、商用利用は許可されていない可能性があります。

小紅書(RED)の規約

小紅書(RED)の規約 出典:小紅書公式ページ
出典:小紅書公式ページ

プラットフォームの知的所有権、特に小紅書プラットフォームで提供されるコンテンツ(動画、画像とテキストの表現、レイアウト、インターフェースデザイン、ページ構造、アイコン、商標などを含むがこれに限らない)、第三者からの許可を必要としないソフトウェアやコンテンツを除き、すべて小紅書会社の所有物です。これらは中華人民共和国の著作権法、商標法、特許法、不正競争防止法、国際協定などの法律規制に保護されています。小紅書の書面による許可がない限り、ユーザーはこれらのコンテンツを目的に関係なく、コピー、複製、再制作、または関連する派生製品の作成を許可されていません。

ユーザーのコンテンツと情報の許可

ユーザーのコンテンツと情報の許可

小紅書プラットフォームに投稿、またはアップロードするコンテンツ(テキスト、画像、動画、音声などを含むがこれに限定されない)は、合法な出所を持ち、関連するコンテンツはユーザー自身の所有であるか、必要な許可を取得している必要があります。

侵害申し立て

侵害申し立て 小紅書

小紅書の運営会社は、あなたと他の人の知的所有権、名誉権、氏名権、プライバシー権などの合法的な権利を尊重し、保護します。あなたは、小紅書プラットフォームにアップロードされたテキスト、画像、動画、音声、リンクなどが第三者の知的所有権、名誉権、氏名権、プライバシー権などの合法的な権利を侵害しないことを保証します。それ以外の場合、小紅書は関連当事者からの通知を受けた場合、侵害の疑いのあるコンテンツを削除する権利を有します。

以上は小紅書(RED)内にある規約を一部抜粋したものですが、商用での利用を禁止しています。念のために上記の内容を中国の弁護士に確認もしたところ、商用での利用は禁止しているとの見解を改めて確認しています。

商用利用の定義

商用利用とは、単純に掲載内容だけで判断するのではなく、アカウントを開設した趣旨、投稿の目的などを総合的に鑑みて、当該会社に利益を享受する目的でアカウントを運用していることを指します。したがって、多くの企業のSNSアカウントは該当すると考えてよいでしょう。

特に個人でもアカウントを運用している方が陥りやすいのですが、企業アカウントやブランドアカウントでも普段と同じように編集をしてしまうと、知らぬ間に著作権侵害をしてしまっていることがあります。中国国内においては周知の事実ですので、残念ながら、その規則を把握していない企業が罰せられることになります。
その結果、ある日突然、著作権侵害の通知が相手方から届くことになるのです。怖い話ですよね。でも、これが現実問題として起きているのです。しかも、1件、2件という話ではありません。

KOL(インフルエンサー)の投稿でも企業側の責任に?

冒頭でもお伝えしているように、著作権侵害の問題は自社が運用しているアカウントだけに限った話ではありません。
企業が広告として依頼をしたインフルエンサー(KOL、KOC)が投稿したコンテンツも商用での利用という定義になります。
したがって、広告依頼をしたKOLやKOCの投稿も、SNS内にある一部商用を認められているものを除き、フォント、絵文字や音楽を利用することができないという事です。
過去に広告投稿を依頼したことがあるという方は、一度MCNや広告代理店に、どのようにインフルエンサー(KOL)の投稿を管理しているかを確認しておくと良いでしょう。
過去に遡って訴えられるケースもあります。

中国SNSアカウントで著作権侵害を避けるポイント

中国SNSアカウント著作権侵害における簡易チェックと確認ポイントを5つ紹介します。皆さんも以下の5つのポイントもとに一度確認されることをお勧めします。

1、中国SNSで商用利用を行っている、もしくはこれから行なう場合。

中国SNSでは、SNSに内蔵されているフォントや音楽は一部を除いて商用利用が許可されていません。プラットフォームごとの利用規則を確認しましょう。小紅書(RED)、抖音(Douyin)などのプラットフォームごとに商用における利用規則が異なります。該当するプラットフォームをすべて確認しましょう。

2、有料で購入したフォントを利用している。

有料で購入したフォントを使用している場合、利用可能なプラットフォームの範囲が定められています。利用できるプラットフォームを必ず確認しましょう。フォントを購入したからといって、必ずしも、すべてのプラットフォームで使えるわけではありません。

3、抖音(Douyin)で内蔵されている音楽を使って作成した動画を、他のプラットフォームでも投稿する場合。

抖音内の規約では商用利用は問題ないとしても、小紅書(RED)などのその他のプラットフォームでの2次利用が許可されていない場合が多いです。2次利用がないかも併せて確認しておきましょう。

抖音(Douyin)の規約抜粋
抖音(Douyin)の規約抜粋

商用音声素材を使用する場合(商用音楽モジュールの音楽、または効果音、音色、または声変わり機能モジュールに含まれる音声など、これに限定されない)、お客様は以下の条件に同意し、これを認めます。関連するページに特定の許可プラットフォームに関する情報がない限り、上記の出所音楽または音声を含むビデオは、剪映および抖音のみで配信、共有、および公開できることに同意します。さらに、許可プラットフォーム以外のプラットフォーム(テレビ、ラジオ、演劇などを含むがこれに限定されない)でビデオを配信する場合、音楽著作権所有者からそのビデオをプラットフォーム上で配信するために必要なすべての権利と許可を自己取得することに同意します。音声を不法に使用したり、違法なコンテンツに関連させたりしてはいけません。これらの条件に違反する任意の第三者のクレームや紛争について、お客様はすべての責任を負うことに同意します。これらの条件の違反により、剪映および/またはその関連会社に対する第三者のクレーム、苦情、調査、紛争、訴訟、または仲裁が生じる可能性がある場合、お客様は剪映およびその関連会社が受けるすべての損害を弁護し、補償する責任を負うことに同意します。

4、過去に中国SNSの公式フォントを利用して、商用利用してしまっている場合。

中国SNS内に内蔵されているフォントや音楽は商用利用が原則禁止されているケースが多いです。特にRED(小紅書)は利用が制限されています。投稿をしてしまっている場合、過去の投稿を削除したり、非公開にする、またはアカウントを停止にするなど、対応を検討してください。

5、広告投稿をインフルエンサー(KOL)に依頼した。

投稿内容はインフルエンサー(KOL)に任せており、フォントなどの著作権まわりは把握していない。という方は、依頼した広告会社など著作権に対する認識があるか確認しましょう。もっと理想を言えば、著作権侵害があった場合は、インフルエンサー(KOL)側に責任が転嫁される契約をしているかなども確認しましょう。
もし、著作権侵害などの行為に対して、インフルエンサー(KOL)に責任転嫁する条項が入っていない場合は、広告投稿なのか、一般投稿なのかを確認してください。広告投稿の場合は、下記のように広告という投稿が表示されています。

広告投稿の場合の「広告表示」例
広告投稿の場合の「広告表示」例

広告投稿と表示されている場合は、広告主が著作権等の法律の適用対象になりますので、フォントや音楽などの利用が著作権をクリアしているフォントや音楽などかを確認しましょう。

6、フリー素材を使用している

フリー素材で、商用利用可能と書いてある中国会社の素材を利用していたところ、いきなり素材を無断利用しているとして請求が来たケースがあります。サイトを見に行ってみると、無料だったはずの素材がいつの間にか有料になっていたようです。
このようなケースの場合に備えて、フリー素材と記載してある箇所のキャプチャ画像などを取っておくと良いでしょう。

まとめ

中国マーケティングの中心がSNSとなっているため、かなり多くの日本企業がブランドアカウントやKOL、KOCを通じてコンテンツをアップしています。
コンテンツの増加に伴って、中国企業から日本企業に対して、著作権侵害で訴状が届くことがとても増えています。
一部ではわざと著作権侵害されることを狙ってフォントなどが使われることを待っている会社もあるようです。

これから始める企業も、すでに始めている企業も、担当者のみなさんは、知識なく始めることで、知らず知らずのうちに法律侵害に巻き込まれる可能性があります。

自社のSNSアカウントは大丈夫かしら?と思ったら、一度、当社のSNSアカウント運用チームまでご相談ください。
また、まさにこれからKOLに広告投稿を依頼しようと思っていました。なんか心配になってきました。コンプライアンス遵守したKOL投稿をお願いしたいのですが、どうしたら良いでしょうか?などなど、

皆さんの不安を解決できるかもしれません。中国広告法についても外部の中国弁護士事務所と連携して、業務を請け負っております。法律チェックから業務(有料フォントの提供、インフルエンサー管理)まで、ワンストップでお任せしたい方も、まずはお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

中国弁護士 周 テイ(Ting Zhou)先生

中国著作権法監修
IP FORWARD法律特許事務所

中国弁護士 周 テイ(Ting Zhou)

2010~2011、広島修道大学で交換留学して日本法を専攻
2011年、西南政法大学在学中に中国司法試験に合格
2012年、西南政法大学法学部卒業
2012年、IP FORWARDに加入

<主要業務分野>
主に、知的財産権侵害民事訴訟、権利付与・確定の行政訴訟、行政法執行、
営業秘密保護業務を中心とした知的財産権業務を担当するほか、契約書の作
成・交渉、中国市場進出法律調査・提案、債権回収等の企業法務業務も携
わっている。

この記事を書いた人

中山 隆央(Nakayama-Takao)

中山 隆央(Nakayama Takao)

2008年、株式会社東急エージェンシー入社。国内企業・外資企業を担当し、2016年より30歳(当時最年少)にて部長職として、営業部門を統括。2017年より、ENJOY JAPANに参画し、日本企業の中国市場展開(マーケティング・越境EC)、中国企業(エンターテインメント系)の日本進出を担当。

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