中国越境ECを運営している企業・担当者のみなさん、中国越境ECに関係する法律はきちんと理解されていますでしょうか?今回は中国越境ECの法律を紹介するとともに、遵守すべきポイントをご紹介いたします。

中国向け越境ECの法律は電子商務法だけではない!

中国越境ECの法律と言えば、電子商務法(2018 年8月発布。2019年1月施行)のことだと断定していませんでしょうか?

実はこの法律、言及されているのは、あくまでも中国国内の電子商取引に限られています。したがって、販売者が中国法人、購入者が中国人であることを想定しているので日本企業が中国消費者に越境ECで販売することは、この法律内には明記されていないのです。つまり、電子商務法だけでは、越境ECの法律を理解していますとは言えないのです。

遵守すべきポイント

では、何に従えばいいのか?
以下、二つの通知と公告(日本における官報のような文章)をご紹介いたします。こちらでご紹介するポイントをまず押さえましょう。

越境ECに関する通知と公示

越境EC小売輸入監督管理に係る所事務の健全化に関する通知
(商財発[2018]486号、以下「通知」とする)
越境EC小売輸出入商品に係る監督管理に関する公告
(税関総署公告2018年第194号、以下「公告」とする)

まさに、この二つの法令が、販売者が日本法人などの外国法人で、購入者が中国消費者であることを想定して明記されております。
今現在、「越境ECを運営している」「越境ECを運営したい」という企業・担当者の皆さまは、この二つの通知と公告をしっかり理解することが必須となります。

越境ECに関する通知と公示の重要ポイントを解説

では、この通知と公告の詳細について重要なポイントに絞って解説します。

ポイント1『商品の品質安全性の主体責任』

こちらはとても重要な項目です。
商品を輸出する際に、「万が一その商品に何かトラブルがあった場合は誰に責任があるのか?」これを明確にしておく必要があります。そこで、中国政府は中国税関に対して、中国の通関業者に委託して商品の情報(成分、売価、使用期限、JAN、HSコードなど)を登録するように定めています。次に、税関に委託する企業(通関業者)と輸出事業者は、連帯して責任を負い、誠実に税関に申告をするよう定めています。

ポイント2『消費者への注意告知義務』

販売者が日本法人で購入者が中国国内消費者の場合、国を越えて商品を購入する際、消費者に対して「どのような商品なのか?」を明確に伝える必要があります。その際に、販売者は消費者に対して、以下のリスクに関して告知書を提供する必要があると記載されています。一つ目は、商品の品質、安全性、衛生、環境保護、表示などの基準や技術基準を満たしているのか。次に、商品が海外から直接購入される為、中国語のラベルではない可能性があり、消費者はウェブサイトを通じて、商品の中国語の電子ラベルを見ることができる。などの対応が必要になります。

ポイント3『基準や法律は、中国?日本?』

商品の安全性の基準は日本の法律に遵守すれば良いのか?もしくは、中国の法律に遵守すれば良いのか?
販売者が日本法人で、消費者が中国人の場合、どちらの基準に立てば良いのか?今回の通知と公告を見る限りでは、販売者が日本法人の場合は、日本の基準を遵守していくという判断を行う可能性が高いと思われます。
しかし、過去に

食品安全基準の判例や、商品ラベルの判例から中国の食品安全基準を適用とする判決や中国語のレベルを貼付する必要があるという判例

がありました。
※山東省済南市中級人民法院/(2018)魯01民終51号

この判決はとても珍しいケースですが、こういった判例から「万が一のこともある」ということを認識し精査しておく必要がありそうです。

まとめ

以上、越境ECにおける遵守すべき法律(法令)をご紹介しました。
皆さまもこれを機に、法律上問題なく越境EC事業を運営できているのか?再確認する良いきっかけになってほしいと思います。
せっかく、「中国で売上が上がってきた!」と思っていても中国越境ECにおける基準や法律を知らなかったことで今までの頑張りを台無しにしたくないですよね。

当社では、実務を理解した上での中国弁護士と連携した法律相談も受けております。
心配に思われた際には、お気軽にお問合せください。

また、中国向けの越境ECの市場規模や利用者像、販路開拓方法は以下の記事でまとめておりますので是非ご覧ください。


この記事を書いた人

中山 隆央(Nakayama-Takao)

中山 隆央(Nakayama Takao)

2008年、株式会社東急エージェンシー入社。国内企業・外資企業を担当し、2016年より30歳(当時最年少)にて部長職として、営業部門を統括。2017年より、ENJOY JAPANに参画し、日本企業の中国市場展開(マーケティング・越境EC)、中国企業(エンターテインメント系)の日本進出を担当。

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