厳格なコロナ対策を行っていた香港ですが、経済への影響などから帰国後3日間の強制隔離が撤廃されるなど、足並みを揃えていた中国本土の厳格な施策とは異なる方針へと転換を始めました。
日本では、10月11日に入国時の水際対策が大幅に緩和され、個人旅行なども認められることになったことなどから香港からの観光客が次第に戻り始めました。
元々香港からは多くの観光客が日本に来ており、インバウンド関連事業者にとって大事な市場であります。

本記事では、コロナ前の訪日香港人観光客市場に関する解説と、今後の傾向を紹介、将来につながるより良いPR方法などをまとめています。

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訪日香港人観光客の市場

国土面積が1,100平方キロメートルと、東京都の半分ほどの広さの香港では、国内旅行という概念がありません。地理的にも近い日本には、例えば東京に住んでいる人が飛行機に乗って北海道や九州などに遊びに行くのと同じ感覚で来ています。


自由貿易港となっている香港は関税や輸入規制がほとんどないため、日本製品は生活の身近なところに溢れており、日本食にも普段から慣れ親しんでいます。
後ほど詳しく紹介しますが、リピーターの多さがそれを物語っており、一度気に入ってもらえば何度も来たり買ってくれたりする顧客になりますので、日本にとってはとても大事な市場といえます。
また、東日本大震災により停止した訪日旅行を、いち早く再開したのが香港だったことで、香港の方々に感謝した人も多いことでしょう。

日本を訪れた香港人観光客の数

日本政府観光局(JNTO)‐訪日外客数のシェアの比較
引用元: 日本政府観光局(JNTO)|訪日外客数のシェアの比較

2019年に日本を訪れた香港人観光客の数は229.1万人。上位3位を占める中国、韓国、台湾と比べると少なく感じられますが、香港の総人口730万人のうち約3分の1の人々が日本を旅行していると考えられ、いかに日本が好きかということがわかります。

また、アウンコンサルティング株式会社が2021年に国別に実施した日本への好感度調査によると、日本を「大好き」と答えた香港人は全体の66.1%、「好き」と答えた人が30.4%もいました。このことから香港の親日ぶりが伺えます。

訪日リピーターの数も非常に多く、観光庁による2019年のデータでは2回目以降と答えた香港人は全体の87.7%、そのうち10回以上と答えた人は29.7%もあり、驚く程のリピート率なのがわかります。訪日観光客の人数だけを見るよりも「濃厚な日本好き」が香港にはいかに多いかがポイントなのです。

この件はマスコミやネットニュースなどではあまり広く報じられていませんが、コロナからの日本の経済復興においてぜひ知っておきたい点です。

日本を訪れた香港人観光客の年代・性別

引用元: 観光庁|訪日外国人の消費動向(2019)

観光庁による2019年の「訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析」によると、観光目的で来日する香港人の性別割合は男性が46.6%、女性が53.4%と女性が若干多めです。年齢に関しては男女共々20代から50代の働き盛りが上位3位を占めています。

香港の旅行サイト「攜程旅遊」が2020年に調査した「コロナ後最も行きたい国ランキング」では日本はタイに次ぐ2位。アウンコンサルティングが2022年に実施した調査によると「新型コロナウィルス感染症が収束したら日本に行きたいですか」という質問に対し「すごく行きたい」と答えた人は39.5%、「行きたい」と答えた人は29.8%。台湾、中国と並び高い数値となりました。

しかしながらこの2年間、日本の感染者爆増のニュースは香港でもたびたび報じられており、感染者数の状況によっては香港人の日本旅行への意欲が減少してしまうという恐れがあることも事実、今後の感染者数を見据えた長いスパンでのPR活動が必要そうです。

日本を訪れている香港人観光客の特徴

観光庁|訪日外国人の消費動向(2019)
観光庁|訪日外国人の消費動向(2019)
引用元: 観光庁|訪日外国人の消費動向(2019)

訪日香港人の特徴としてあげられるのがやはりリピート率の高さです。具体的な統計を見てみると、2019年のデータでは訪日10〜19回目というリピーターが19.1%にものぼります。観光・レジャーの滞在日数も4~6日間が57.2%、7〜90日間が40.8%と、日本人の旅行習慣と比べるとかなり長めなことがわかります。

日本旅行好きな香港人の中には、一般的な日本人よりも日本全国を巡った経験をもつ人も少なくない程です。なお、観光局の2019年の月別訪日客数のデータによると、学生の休みとなる6月、7月、年末の12月に日本を訪れる香港人が非常に多いです。ウィズコロナの生活がこのまま進めば今年の12月は多くの香港人が日本に訪れる事が予測できます。

訪日香港人観光客の消費動向

コロナ前は日本旅行を日常的に楽しんでいた香港人、自分でホテルや航空券などの交通手段を手配し個人旅行を楽しむ人も多いようです。慣れ親しんだ日本での消費動向について調べてみました。

観光・レジャー目的の香港人観光客の行動

■国籍(出身地)別、都道府県別外国人延べ宿泊者数構成比(上位5都道府県)
(平成31年1月~令和元年12月(確定値))

引用元-観光庁宿泊旅行統計調査
引用元: 観光庁|宿泊旅行統計調査

観光庁が2019年に実施した宿泊旅行統計調査によると、香港人が日本旅行で宿泊した都道府県で最も多いのは東京、大阪、北海道の3都道府県です。

他のアジア諸国と比べてみるとランキング内容は似ているようですが、亜熱帯の気候に属する香港は雪が降らず、雪への憧れが高いことから北海道が3位にランクインしているのが特徴です。毎回違う場所を訪れその土地土地、季節ならではの景色やグルメを楽しんでいるようです。

また、年中行事やイベントにちなんで日本を訪れる人も多い傾向です。観光庁の調査によると香港人が訪日の際に体験したことで最も多いのが「日本食を食べる(97.5%)」「ショッピング(89.2%)」「繁華街の街歩き(76.8.0%)」「自然・景勝地観光(71.9%)」。この4項目が他に差をつけてランクインしています。香港では回転寿司や牛丼など多くの日本食店が並び、行列をつくる程の人気です、日本食が非常に好きで事前に日本のグルメ情報をチェックしてから渡航する人が多いようです。

観光・レジャー目的の香港人観光客の消費金額

観光庁ー訪日外国人の消費動向(2019年)
引用: 観光庁|訪日外国人の消費動向(2019年)

2019年に日本を訪れた香港人1人あたりの平均支出額は155.951円。その中でも買い物に払った金額が全体の約33.5%と最も多く、次いで宿泊費(29.6%)飲食費(23.7%)という順番です。

購入した品目は菓子類が最も多く69.3%、1人あたり平均8,813円使用しています。次に衣類が51.9%と高め、衣類については満足度も高く、日本のファストファッション店で爆買いをする香港人も多くいます。買い物場所に関してはコンビニが78.7%、次いでドラッグストアが75.0%、デパートが66.8%となります。特に10回以上訪日経験のある香港人の1人あたりの支出額が180,138円と9回目までの金額と比べるとぐっと高くなる傾向。リピーターの経済力の高さが伺えます。なお、免税手続きの実施率は70.7%と高め。いかにお得に商品を購入するかという情報を旅行前にチェックしているようです。

香港ではコロナ禍に量販店やドラッグストアなど多くの日系の店がオープンし行列ができました。このことから、いかに日本の商品が好きかということがわかります。

香港人インバウンド集客を成功させるマーケティング方法

観光庁_訪日外国人の消費動向(2019)
引用: 観光庁|訪日外国人の消費動向(2019年)

香港人インバウンドの集客を成功させるためには、訪日リピーターが多い香港人の心に訴えかけ印象に残るような情報発信を続けることが重要です。人口の85.6%がSNSを利用しているSNS大国ではありますが、紙の媒体である旅行専門誌が第4位にきていることも注目したい点。香港中央図書館の2019年貸し出しランキングの上位10冊のうち8冊が日本に関するガイドブックであったという興味深いデータもあります。 

今後起こりうる中国政府によるSNSに対する規制にも注意しながら上手にPR活動する事をおすすめします。今回おすすめするのが以下の内容です。

旅行ブロガーなどのインフルエンサーの起用

日本でも同様の流れですが、香港でも若い人ほどYouTubeやInstagramで行き先を探すようになってきています。視覚的に行きたいところを見つけて、詳しい情報をgoogleで検索をして最終的に行くかどうかを判断します。そのため、インフルエンサーの活用は重要です。

観光庁の調査では個人ブログが1位となっていますが、コロナが流行っていたこの2年以上の間にSNSの傾向が大きく変わり、ブログ離れが顕著になっています。社会情勢などによっても大きく変化するSNS事情、SNSでインバウンド戦略を進める場合は2つ以上のコンテンツを掛け持ちで運営する事をおすすめします。

日本在住の香港人YouTuberやインスタグラマーも多くいます。活用してみたい場合は当社までお問い合わせください。

SNS・動画サイトの自社公式アカウントの運用

JNTOが2021年に実施した調査では、香港人の74.0%がFacebook、48.5%がInstagramを使用しています。ツイッターやTikTokを使用する人は日本と比べるとかなり少なめです。

近年プライバシー保護のためにFacebookからMeweに切り替える人が増え始めており、Facebookを使用する香港人は減少傾向。Facebookに関しては年齢層が高めの方が多く利用する傾向があります。ソーシャルメディアのグローバルデータサイトDATAREPORTALによると2022年初頭の香港でのYouTube使用者は668万人、人口の90%以上がYouTubeを使用しているという結果です。

亜熱帯気候の香港にははっきりとした四季がないため、日本の四季折々の美しさに憧れを抱く人も多く、自然の美しい映像や画像を交えたアカウントが好まれているようです。また日本ではあまり知られていないWhatsAppやWeChatなどLINEのようなSNSを使用する人も多く、公式アカウントを開設して情報を発信するのも一つの選択肢です。

繁体字の自社ホームページの開設

香港人は日頃繁体字を使用しています。訪日客の集客を目指すのであれば繁体字のHP開設をお勧めします。政治情勢により、香港でも中国で使われている簡体字を多く目にするようになりましたが、簡体字と区別することによって「自分たちを歓迎してくれている」という好印象に繋がります。

また中国政府の規制がSNSに入ることで、折角増やしたフォロワーを無駄にしてしまうという残念な事態も起きないとは限りません。自社ホームページを持つことで、規制がさらに進んだ際の保険としての役割を果たしてくれることでしょう。また、同じく日本好きが多い台湾でも繁体字は使用されています。

若干の違いはありますが、旅行情報などを得る際には香港人も台湾人もお互いが使用する文章を読むことに慣れています。繁体字を使用する事で台湾人の集客にもつながるという一石二鳥の効果があるのです。ただ活字を読むことに疲れを感じている人も多いため、魅力的な写真をふんだんに掲載したホームページを制作することをお勧めします。

Google広告の掲載

現在中国では政府の規制によりGoogleの閲覧、広告の配信はできませんが香港では規制されていないため、多くの香港人はgoogleを使い日本旅行の行き先などを調べています。

Googleは日本でも使われているため、使い慣れない海外のサイトを使って広告投稿するよりも簡単です。また香港人の90%以上が閲覧しているYouTubeへの広告投稿もおすすめで、DATAREPORTALによると2022年1月の広告リーチ数が人口の88.1%というデータも出ています。その数から、当時のインターネットユーザー(年齢問わず)の94.8%がYouTube広告を目にしたということがいえます。

YouTubeは、香港人に向けた宣伝媒体として欠かせないものとなっています。香港で多くのユーザーを誇るGoogleですが、2021年に香港政府にユーザー情報を提供していたことが報じられていることから、今現在は安定していますが今後近い未来のユーザー離れの心配もゼロではないということを頭に入れておきましょう。

訪日メディアの活用

観光庁が発表した出発前の旅行情報ランキングによると、ブログやSNS以外に日本政府観光局による訪日ホームページや旅行会社のホームページを参考にしている香港人が多いのがわかります。

特に年配者は政府や企業が運営するサイトに安心感があり、実際の旅行の際に役に立ったという意見も多いです。SNSにあるような写真映えだけに特化したものではなく、実用性のある内容が重宝されているようです。日本旅行が好きな香港人は以下のようなサイトを参考にしています。

香港では子供の頃から日本の漫画やカルチャーに親しんできた人が非常に多く、日本のテレビ番組を日常的に見ているという人も多いです。

月々の契約料を支払うことで日本のテレビ番組を視聴できるサイトや、放送権を購入し日本の番組を放送しているテレビチャンネルもありますが、動画サイトなどにアップロードされた日本のテレビ番組を見ているという香港人が非常に多いのも特徴です(この行為は違法とされていますが香港人の間では日常茶飯事となっているのも現実です)。
このようにして、日本のバラエティ番組や旅行番組からリアルタイムに近い形で日本の情報を手にしているようです。

まとめ

日本と香港それぞれの規制緩和により、多くの香港人がまた日本を訪れることが予想されます。香港の航空券予約サイトではチケットの争奪戦が繰り広げられているようです。現在は航空券の価格高騰により日本旅行を控えている人も多いですが、来年には通常運転に戻るのではという見方もあります。

航空券の価格が高騰している間に訪日する香港人には購買力の高いアッパーミドル以上の旅行客が多い為、コロナ禍に発生した経済損失をうめる大きなチャンスとなるでしょう。海外旅行の正常化に向けて入念な準備とPRが必要とされます。何度来ても素晴らしいと思える日本の魅力を大いに発信し、インバウンド復活を目指しましょう。

ここでご紹介した集客のためのアプローチ方法などは、まだまだ一部です。日本好きで、何度も来てくれる香港人観光客へアプローチを行いたい方は、まずは一度当社までご相談ください。

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この記事を書いた人

ENJOY JAPAN 編集部

変化の早い中国のマーケティング情報を、「早く」「わかりやすく」をモットーに弊社メンバーや専門家などのチームで記事を執筆しています。

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