訪日ベトナム人観光客のインバウンドマーケティング【特徴と集客方法を解説】

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訪日ベトナム人観光客のインバウンドマーケティング【特徴と集客方法を解説】

ベトナムからの訪日観光客は、ここ数年で急速な拡大を遂げ、日本のインバウンド市場において存在感を高めています。日本政府観光局の公表データでも、訪日ベトナム人客数は堅調な伸びを示しており、2025年には過去最高水準に迫る勢いとなりました。今後もベトナム国内の経済成長と中間層・富裕層の拡大を背景に、安定かつ力強い需要が見込まれています。

ベトナム人観光客の特徴は、高い消費単価とSNSを起点とした情報収集・拡散力にあります。日本製品への信頼感は非常に強く、衣料品や化粧品、家電、サプリメントなどを中心に購買意欲が旺盛です。さらに、FacebookやInstagram、TikTokといったSNSを通じて旅行体験が共有されることで、次なる訪日需要を生み出す循環が形成されています。

また訪日の目的として、日本ならではの文化・自然体験が大きな動機となっています。その一方で、ビザ制度の影響で団体旅行が選ばれやすいという市場構造や、食文化・決済環境への細やかな対応など、受け入れ側に求められる工夫も少なくありません。

こうした背景を踏まえると、ベトナム市場は単なる新興マーケットではなく、年間を通じて安定的な集客が期待できる「戦略的重点市場」と位置づけることができます。本コラムでは、最新データと現地動向をもとに、訪日ベトナム人観光客の特徴と今後の展望を整理し、日本企業が取るべき具体的なアプローチを考察します。

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ベトナム人観光客の特徴と傾向

SNSを通じた情報収集・拡散

市場調査会社DataReportal の調査「Digital 2026: Vietnam」によると、ベトナムにおけるSNS利用者は総人口の77.6%(2025年10月時点)と非常に高い水準でありました。

また、観光庁(2023)によると、出発前に役に立った旅行情報源(複数回答可)として、日本在住の親族・知人(25.0%)、自国の親族・知人(24.4%)、SNS(Facebook、X、微信など)(22.8%)が上位に上りました。特に近年はSNSを利用した旅行情報の収集が定番化しており、InstagramやTikTokも多く用いられているようです。

高い消費単価

出典:観光庁

訪日ベトナム人観光客は、世界平均や各アジア諸国と比較して消費単価が高い傾向にあります。観光庁が発行した2025年の消費額データと訪日外客数に基づいて算出すると、ベトナム(約30万円)はシンガポール(約31.6万円)に次いで2番目に消費額が高い国でありました。

また近年の傾向として、訪日ベトナム人は、日本で本場の日本製品を購入したいという願望を持っています。人気の購入品目として、ユニクロなどの衣料品、装飾品、化粧品、家電製品、医薬品・サプリメントなど嗜好品だけではなく実用品も多く挙げられています。

旅行会社のツアーを利用した観光

出典:JNTO

個人旅行よりも「団体ツアー」の割合が非常に高いことも特徴として挙げられます。これには、査証(ビザ)申請が絡んだ背景があります。

日本政府が指定する旅行会社を通じて団体ツアーを申し込む場合、本来査証取得に必要な書類などが一部省略される措置が適用されます。個人での申請はハードルが高い一方、ツアーであれば渡航のハードルがぐっと下がるため、必然的に団体旅行が選ばれているのです。

ベトナム市場を攻めるなら、まずはこうした「ビザ事情」から生まれる団体客の動線を意識することが欠かせません。

体験消費への関心

ベトナム人観光客への調査によると、日本旅行で体験したいことの第1位は「日本食を食べる」ことでした。続く第2位には、同率で「美しい自然風景」と「桜(花見)」がランクイン。さらに「ショッピング」「紅葉」「伝統芸能」と続き、彼らが日本独自の食文化や四季の美しさに強い憧れを抱いていることがわかっています。

一方で、実際に訪日した際に感じられる不満点も浮き彫りになっています。

特に顕著なのが「食」に関するギャップです。多種多様な野菜を好むベトナム人にとって、日本の食事は野菜不足や味付けの濃さ(塩辛さ・甘すぎ)が気になるところ。また、一度に多くの品数を楽しみたい彼らにとって、丼ものなどの単品料理は物足りなく感じられる傾向にあります。

インフラ面では、無料Wi-Fiの少なさや、地方におけるキャッシュレス・両替の不便さが不満に繋がっています。さらに、団体客からは「夜の街に活気がない」「日本の果物を買う機会が少ない」といった声も上がっており、夜の楽しみ方や食品購入の利便性を提供することが、満足度向上の鍵となりそうです。

安定した訪問者数

出典:JNTO

最新のデータから、訪日ベトナム人客は年間を通じて安定しており、かつ着実に増えていることが分かります。旧正月(テト)の影響で跳ね上がる2月や、桜シーズンの3〜4月がピークなのはもちろんですが、梅雨や秋口といった日本の旅行オフシーズンとされる時期でも、極端な落ち込みが見られません。春の桜や冬の雪といった定番のフックに加え、地方チャーター便の増加や、体験・グルメといった多様な目的が、年間を通じた安定した訪問を支えています。

ベトナム市場は、特定のシーズンに依存することなく、年間を通じて安定した稼働を期待できる優良なターゲット市場へと進化しています。

決済トレンド:QRコードとタッチ決済の普及

ベトナム国内ではデジタル決済が爆発的に普及しており、その習慣が訪日旅行にも持ち込まれています。

ベトナム国内ではQR決済の取引件数が年間100%以上のペースで増加しており、特に若年層はスマホ一台で完結するスタイルが当たり前になっています。Visaのデータによると、訪日ベトナム人観光客の多くが百貨店やドラッグストアで「タッチ決済(コンタクトレス決済)」を利用しており、今後さらにその需要は拡大する見込みです。

ベトナム人が使うSNS

引用:Datareportal, 2026

ベトナム人観光客へのアプローチを考えるうえで、SNSの理解は欠かせません。ベトナムのインターネット利用者は8,560万人を超え、SNSユーザーは7,900万人(インターネットユーザーの約92.3%)に達しています。これは世界平均(61.4%)を大きく上回る数値であり、SNSが生活インフラとして機能している市場です。

引用:Datareportal, 2026

主要SNSの状況は次のとおりです。

まずFacebookはユーザー数が最多であり、利用率は16〜64歳の層で92.3%に上ります。旅行コミュニティでの情報交換やビザ情報の共有など、生活に密着した使われ方をしています。

次にTikTokは広告リーチ率が88.8%と圧倒的で、1日の利用時間は1人あたり平均1時間56分に達します。旅行先の動画コンテンツとの相性が非常によく、若年層を中心に旅行情報収集のメインツールになりつつあります。

YouTubeは旅行前の情報収集手段として東南アジア全体で最も利用される媒体であり、観光地の雰囲気を動画で下調べするニーズに応えられます。

また、Zaloはベトナム発のコミュニケーションアプリで、LINEに近い使われ方をしており、現地スタッフとの連絡やビジネス用途でも活用されています。

旅行先を決める際の情報収集では、YouTube・Facebook・Instagramの順でSNSが参照される傾向があります。

日本人にはなじみの薄いFacebookやTikTokが主要チャネルであることを踏まえ、これらのプラットフォームでの情報発信が集客のカギとなります。

訪日ベトナム人向けインバウンド集客施策

では、実際にどのような施策が有効なのでしょうか。ここでは特に取り組みやすい3つのアプローチをご紹介します。

① ベトナム語コンテンツの整備

店頭メニューやウェブサイト、SNSの案内をベトナム語対応にするだけで、来店・購買のハードルが大きく下がります。

とはいえ、いきなりベトナム語対応が難しい場合でも、まず英語表記だけは必ず整えておくことが最低限の前提です。ベトナムでは英語教育が普及しており、特に旅行経験のある層は英語での情報をある程度読み取ることができます。英語対応を土台にしたうえで、余力があればベトナム語を追加するという段階的なアプローチが現実的です。翻訳ツールの精度が上がっている今、低コストで対応できる部分も増えています。

② SNSでのベトナム語発信と口コミ誘導

FacebookやTikTokでベトナム語による情報発信を行い、「映える」スポットや体験の設計をすることで、来店時に写真や動画を撮るきっかけとなり、SNS上での自然な情報拡散につながります。

特にTikTokではショート動画でのリアルな体験動画が拡散されやすく、インフルエンサーではない一般のベトナム人旅行者による投稿が思わぬ集客につながるケースも少なくありません。

まずは「投稿したくなる体験・空間づくり」を意識することが、SNSマーケティングの出発点になります。

また、ベトナム人は友人・家族の口コミや実体験の投稿を強く信頼する傾向があるため、SNS投稿だけでなく、Googleマップや口コミサイトにベトナム語で投稿をしてもらうという方法も有効です。

③ ベトナム人インフルエンサーの活用

ベトナム人に向けて効率的に情報を届けるには、現地で影響力を持つインフルエンサー(KOL:Key Opinion Leader)との連携が非常に効果的です。

在日ベトナム人インフルエンサーに店舗・施設・商品を体験してもらい、リアルな感想をSNSで発信してもらうことで、広告よりも高い信頼感を持って情報が届きます。

言語の壁や採用コストが課題になりがちですが、下記のようなインフルエンサーマッチングサービスを活用することで、月額定額で外国人インフルエンサーへのPRを手軽に始めることができます。

観光庁の訪日外国人の消費動向(2025年)によると、訪日旅行前に役立った情報源の上位はSNSや動画サイトと知人からの情報が占めており、

広告ではなくSNS上のユーザーから得られる情報や知人からの口コミを重要視して旅行先を決めていることが分かります。

訪日ベトナム人市場に向けた今後の展望

1.未経験層の開拓と地方分散

訪日ベトナム人市場は、未経験者が約8割を占めていることから、依然として「憧れの日本」を体験してもらう新規層の獲得が最重点となります 。現在はゴールデンルートを中心とした団体ツアーが主流ですが、今後はチャーター便の増加を活かし、地方の魅力を組み込んだ商品造成を現地旅行会社へ働きかけることが不可欠です 。特に20〜40代のターゲット層に対しては、SNSなどを通じて地方ならではの風景や、彼らの関心が高い「温泉・湯治」といった深みのあるコンテンツを訴求することで、旅行先としての日本の認知と興味をさらに引き上げることが期待されます 。

2.多様化するニーズへの対応

市場の成熟に伴い、世帯所得が高い層を中心に、少人数での旅行やオーダーメイドのプランを求める傾向が強まっています 。こうした層は、ショッピングやローカルフードへの関心が非常に高い一方で、画一的なツアーでは満足しきれない側面を持っています 。今後の展望としては、これまでの団体一辺倒から、個々のパッションに応じた「医療観光」や「教育旅行」といった特定の目的を持つ旅行形態が拡大していくでしょう 。これに対応するためには、現地旅行会社へのきめ細やかな情報提供を行い、高付加価値な個人旅行(FIT)商品のラインナップを拡充することが求められます 。

3.ストレスフリーな環境の整備

今後の成長を持続させるためには、受け入れ環境のデジタル化と、食習慣への配慮が急務の課題となります。ベトナム国内ではデジタル決済やSNS利用が当たり前となっているため、無料Wi-Fiの拡充やタッチ決済、QRコード決済の導入、さらには外貨両替やATMの利便性向上が、観光客のストレスを軽減する鍵となります。また、食に関しても「野菜の量・種類」へのこだわりや、単品料理よりも「複数料理の同時提供」を好むといった具体的な不満点を解消する工夫が必要です。こうした現場レベルでの細やかな改善が、リピーターの獲得や、滞在時間の延長、ひいては地方での消費拡大に直結していきます。

まとめ|ベトナム市場のポテンシャルを最大限に引き出すために

訪日ベトナム人市場は、ビザの優遇措置を背景とした団体旅行という強固な基盤を持ちつつ、今まさに多様化と高付加価値化の転換期を迎えています 。年間を通じて安定した集客が見込めるこの市場において、成功の鍵は「日本への憧れ」をいかに具体的な「満足感」へと変えられるかにあります。

地方への分散化やデジタル決済の普及といった最新トレンドに迅速に対応し、食文化や利便性における細かなニーズのギャップを埋めていくことが不可欠です。ベトナム人観光客が求める「日本ならではの体験」をストレスなく提供できる環境を整えることで、日本は彼らにとって「一生に一度の場所」から「何度でも訪れたい国」へと進化していくでしょう。

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執筆者

ENJOY JAPAN編集部

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