中国で流行中、国潮について解説

中国人の中で自国に対する認識に大きな変化が訪れています。特にZ世代と呼ばれる若者の間でその傾向が顕著で、「国潮」という言葉がブームになっています。2021年5月に、人民日報と百度が検索データに基づいて過去10年間の中国ブランドと中国製品を検索する人々の傾向を調査し、《百度2021国潮骄傲搜索大数据(Baidu2021National Tide Pride Search Big Data)》を発表しました。このデータによると、中国ブランドの検索数と頻度が大幅に増加しており、10年間で528%上昇したようです。

このように中国では「国潮」が大きなトレンドとなっております。ちなみに、「国潮」という言葉が流行する前は、「国貨」という言葉がよく使われていました。今回は、「国潮」と「国貨」という言葉について解説します。

関連記事:中国のZ世代とは?特徴や価値観を解説【Z世代を攻略する!】

国潮とは?

国潮とは、中国の要素を取り入れているファッショントレンドのことを意味します。

「国潮」の「国」は中国の要素を指し、「潮」はファッショントレンドを指します。

しかし、最近ではファッション以外にも「国潮」という言葉は広く使われるようになっており、

一般的に中国人デザイナーによって作られた新しいトレンドブランド、中国文化、中国テクノロジーを表す言葉として使用されています。現在は明確な定義がなく解釈も様々存在しています。

 

国貨とは

国潮ブランド製品

国潮ブランド製品

「国貨」とは中国製の製品に対して使われます。

Made in Chinaの商品は全て「国貨」となります。ちなみに、日本の製品のことは「日貨」と言います。

「国貨」という言葉の歴史と背景

この「国貨」という言葉は清王朝が終わり中華民国が始まる頃に誕生しました。当時、民族起業家たちは、「国を救う産業」を目指し、マッチ、衣類、小麦粉、その他の日用品の生産を強化するために工場施設に投資をしてきました。1949年から1978年まで、中国企業は基本的に国有企業であり、製品は計画的に生産供給されるため、ブランドを構築する必要がなく、長く使えて費用対効果が高い商品が求められていました。

1978年の改革開放後、人々は商品の品質に対する要求が高まり、その中で化粧品ブランドの「百雀羚(PECHOIN)」、飲料メーカーの「北冰洋汽水(ベイビンヤン炭酸)」、スポーツブランドの「回力(フイリー)」など、数多くの国内ブランドが誕生しました。

その後、2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟したことをきっかけに、多くの外国ブランドが中国に参入し、古くからある中国ブランドは大きな打撃を受けました。中国が「世界の工場」というイメージが強まる中、多くの中国ブランドは衰退し、生産工場は海外ブランドから委託を受けて商品を生産するOEM工場としての道を選ぶか、もしくは安価な模造品や偽物を製造するしか道はありませんでした。そして、同時に「国貨」という言葉のイメージは、良いイメージを表すものではなくなりました。

しかし、近年、中国経済が急速に発展したことで、「中国製造から中国創造」に変わり、中国産業は「スピードから品質」へと変化しました。それをきっかけにして、『新国貨』や『国潮』ブランドが生まれるようになったのです。今では、中国産の化粧品を表す言葉として「国貨美妆」(国産コスメ)という言葉が自然と使われるほどに「国貨」という言葉のイメージは良くなりました。

国潮はどのようにして生まれたか?

2018年の新年の初日、中国のスポーツブランド「李寧(LI-NING)」は、ニューヨークファッションウィークのショーに出演し、「中国李寧」の漢字がプリントされたデザインで、モデルがランウェイを歩きました。そこで使用された衣装は国内外のファッション界で話題となり、このことをきっかけにして、2018年が「国潮元年」とも呼ばれるようになりました。

国潮で注目されている分野

「国潮」商品として中国人に人気になっている分野は、

  • デジタル製品
  • ファッション
  • 化粧品


が上位となっていて、それに続き

  • 中国ドラマ・映画
  • 中国マンガ・ゲーム
  • 中国音楽
  • 中国文学
  • 中国グルメ
  • 文化遺産
  • 中国テクノロジー


なども盛り上がっています。

コスメからブラインドボックス、さらにはデジタル製品まで、「国潮」をイメージされる商品であれば、「国潮」の範疇で語られています。

ファッション分野の人気ブランド

例えば、「国潮」の代表格ファッションでは、先に紹介した「李寧」改革開放直後に誕生した「回力(フイリー)」以外に、1930年代に誕生した「飞跃(Feiyue)」が若者に人気となっています。回力(フイリー)や飞跃(Feiyue)は、「国貨」のイメージ悪化と同様に人気のないブランドでしたが、この国潮ブームに乗って大復活を遂げました。どのようなマーケティング活動をしたのかは、また別の記事でご紹介したいと思います。

参考記事:中国コスメブランド「完美日記」のマーケティングはKOL依存?

テクノロジー分野の人気ブランド

テクノロジー面では、特にスマートフォンの分野で中国ブランドが飛躍的に進歩し、ヨーロッパをはじめ世界の主要市場に参入しました。その中で、「Xiaomi」、「Huawei」、「OPPO」、「ViVo」はトレンドブランドとして愛されています。
美容に関しては、アリババプラットフォームのデータによると、今年4月、「花西子」と「完美日記(Perfect Diary)」の2つのブランドの売上額は、「Estee Lauder」や「Lancôme」などの国際ブランドを上回り、人気コスメブランドとなっています。

 

国潮は商品に限らない

国潮ブームは、製品だけでなく文化や観光の分野へも拡大しています。2021年のゴールデンウイークでは、「国潮」の波が中国の文化観光市場を席巻しました。厦門、海口、長沙、蘇州などの人気の観光都市は若い観光客を引き付けるために、各地が競って「国潮」をテーマにしたイベントを実施しました。

厦門

音楽プラットフォームの「酷我音乐(KuwoMusic)」と厦門市が「国潮音楽祭」を開催しました。

海口

有名映画監督の「馮小剛」の映画製作会社は海口市と、「中国アニメ×南洋の景勝地」をテーマに、海南没入型コミックショーを開催しました。

蘇州

華誼兄弟映画会社は蘇州で、中華民国スタイルをテーマにした「クロスタイムスターパーティー」と「チャイナドレスパーティー」を開催しました。

「国創」の時代が来た

中国の商品に自信を付けた中国は、アニメやドラマなどの創造(国創)にも自信を持ち始めます。中国で作られたアニメ映画は2015年ころから多く上映されるようになりましたが、2019年に上映された《哪吒之魔童降世》(日本語名:ナタ~魔童降臨)は、アニメーション映画で歴代1位であったライオンキングを上回り、中国のアニメーション映画としては史上最高の記録を樹立しました。

その興行収入は2019年7月26日の公開からわずか3日間で6億元(日本円で約90億5千万円)に達し、合計50億元(約855億円)の興行収入を記録しました。これまで、中国のアニメ作品は“質が低く子供っぽい” という印象が中国国内では一般的でしたが、そのイメージも大きく変わってきています。

二次元作品が最も多いプラットフォームとして有名なビリビリ動画は、2020年を「中国アニメ元年」と呼んでいます。ビリビリ動画のデータによると、中国アニメのMAU(月間視聴者数)は海外アニメを上回り、ビリビリ動画の最大のコンテンツとなりました。

参考記事:平均滞在時間87分の衝撃!今、ビリビリ動画がアツい!

まとめ

長い間イメージの良くなかった中国製の商品「国貨」が、中国経済の発展とともに国民が自国に対して自信を持つようになり、「国潮」というブームになりました。その勢いは製品だけに留まらず、文化の創造にまで及んでいます。中国コスメが日本の若者達の間で人気になり始めているように、多くの分野でも日本国内でも中国企業が強力なライバルになるでしょう。
守りの姿勢では自信を持った相手の勢いには負けてしまうので、このような状況でも守りに入らず攻め続けるようにしたいですね!

今回は以上です。

この記事を書いた人

橋本-易珊

橋本易珊

日中のハーフで、13歳まで上海で育つ。新卒で日系企業に入社し、上海支社で勤務。日本に帰国するタイミングでENJOY JAPANに参画。中国の美容系情報に強く、常に流行と最新の情報をベースとした提案を 得意とする。彼女が運用するnoteアカウントも大好評運用中。 Noteアカウント:中国トレンド研究所@橋本  https://note.com/hashimotochan