2024年を迎え、早くも旧正月も過ぎました。毎年好評をいただいている、当社代表の瞿史偉(く しい)による、中国市場についての展望を予測するコラム。2024年度版をまとめましたので、ご覧ください。

この記事の内容は、当社YouTubeチャンネルでも発信していますので、ぜひそちらもご覧ください。

2024年の中国で起きる『ポジティブな予想』

まずは2024年に予想できるポジティブな予想についてご紹介したいと思います。

中国で電力に関わる業界の発展

例えば、電気自動車やICチップ、原子力発電などのエネルギー分野でおそらく2024年にはいくつかのビッグニュースが出てくるでしょう。今までにないような発表や、中国が世界一になるというようなニュースが発表されるでしょう。

電気自動車のさらなる発展と普及

例えば電気自動車では中国はすでに2023年に世界一の輸出国となっています。2024年はさらに2位以下との差を大きく広げる躍進が見られるでしょう。具体的には、電気自動車の性能が向上し、世界的にまだ開発段階である自動運転が、大きな規模で普及し始めることが考えられます。

ICチップ業界はアメリカに対抗して開発が進む

次にICチップについて、ICチップのリード国と言えば、重要な産業として力を入れていたアメリカが挙げられます。世界で圧倒的にリードしていくために、また国の安全面という側面などから、競争するよりも中国には輸出しない、など様々な制限を設けました。

一方、中国ではICチップの代表格としてHUAWEI(ファーウェイ)がありますが中国は国の力を注いでいて、2024年にはいくつか大きなニュースが発表されるでしょう。具体的には、アンドロイドやiOS以外の第三の中国独自のOSが発表され迅速に拡大していくと考えています。
国としても強力に後押しをしているのでローンチされた場合、政府の導入や国有企業の導入もあってビジネスとして成り立っていく可能性は十分にあるでしょう。
たとえローンチ直後に問題が散見されても中国国産、only made in CHINA という形でアメリカと対抗していこうと団結して改善や進化に注力していくと思います。

グラフィックカードで有名なアメリカの企業NVIDIAが作っている最新版のグラフィックカード(グラフィック・AIカード)は中国へ輸出が禁じられています。

2023年10月アメリカ商務省が、グラフィック・AIカードに搭載するNVIDIAのA100、H100、RTX、4090などのGPUを許可なしで輸出することを禁じる措置を発表した。

その対抗馬として中国のHUAWEIが似たような製品を出すでしょう。まだアメリカからの圧力を避けるためにあえて詳細は公開されていませんが、おそらく最初はアメリカの最新のものと比較すると性能は劣るかもしれません。
しかしそのように他国の製品より劣っていたとしても中国政府や百度のような大企業が使い始め、注目が集まり一気に進化していくでしょう。
そのように何かをきっかけに特定の分野で「すごいことができました!」というニュースが発表されることは十分想定できます。

2024年の中国で起きる『ネガティブな予想』

2024年、中国の全体的な景気、不動産価格の下降は継続する

現在、中国では今まで著しい成長を遂げて注目されていたほとんどの業界で景気が悪いです。とくに不動産の下落などが目立ち不景気となっています。深刻な問題を抱えている状況です。


基本的に、中国のメディアは、政府からの統制で掲載を制限されているため、中国にとってマイナスとなる記事は書きません。しかし、それを考慮しても実際この数年間で急成長してきた大都市、1線都市だと深圳(シンセン)や、2,3線都市も含めて不景気と見られる情報が目立ってきています。

今まで20年近く続いていた“不動産不敗”の神話が崩壊していて、中国ではミドルクラスをはじめ、大半の人は日本以上に不動産信仰を持っていますのでダメージは結構大きいと思います。もちろん中国政府もいろいろ手は売っていますが、2024年もしばらくは下がり続けることは間違いないと考えています。

ちなみに中国政府がやることは、大量の資金を投下して底上げするなどの手段は持っていると思いますが、まだそこまでは行ってないというのが現状だと思います。不動産価格がある程度下がることは、中国政府は想定済みである可能性もあります。

2024年は中国で進む少子高齢化がさらに進む

今年まだ正式に発表されていませんが、中国では日本と同じように少子高齢化が進んでいます。
外部の統計情報など見ると2023年に生まれた子供の数が800万人を切っているという情報があります。これは結構なスピードで赤ちゃんが減っているということになります。
これからの中国の人口がどう変化していくのか世論が心配を持ち始めるとマイナスな展望になることが予想されます。
その点ついて2024年はもっと深刻なニュースが出てくるでしょう。

例えば、産婦人科とか子供を出産するための医療施設が、今どんどん潰れています。昔はたくさんの妊婦さんが利用していたので拡大を進めていた医療施設が経営が回らなくなったりとそういったニュースが出てくると想定しています。それに付随して幼稚園や保育園に入園する子供が集まらなくなるなども想定できます。

ちなみに、中国政府は対策として2021年8月に学習塾を禁止する政策を実施しましたが、実際には効果は見られていないというのが現状です。

2021年8月政府は学校の宿題と塾通いの負担を減らすために「双減」政策を実施。学校の宿題を禁止・制限するほか、学習塾の新規開設および営利目的の活動などを禁止した。

子育てのしやすい環境づくりを構築することが狙いだったと思うのですが、その効果は目に見える形で出ていません。そもそも若い人が結婚する数が著しく下降しています。
当初はコロナが原因で下降していたのではないかと考えられていたのですが、ゼロコロナ政策が解禁した後も通常の推移に戻ることがありませんでした。

2023年は結構ひどい数でしたのでこの傾向からすると2024年はもっとひどい結果になることが考えられます。もちろんそういったことに関連するニュースは世の中に出ると思いますので、「人口が減る」ということは国全体の発展や経済に大きく関わることですのでネガティブであると言えます。

2024年、日本企業は中国に対してどのように向き合っていくべきなのか?

中国全体として、プラスの面もあればマイナス面もあるという視点についてなのですが、「国」という範囲で見てしまうとどうしてもプラス・マイナスという視点で見てしまうので経営方針に大きく影響を与えてしまいます。
しかし、結果から言うと日本企業の商品とか「メイドインジャパン」を好きな方は確実に一定数存在しています。
私の感覚で言いますと数千万人から一億人くらいは日本の商品が好きだし、日本の美的な意識を持っている人もいるし、例えば、去年話題になっていた処理水の問題などニュースに挙がっていても別に関係なく日本の商品を買い続けている中国の人々、そんな人々だけにフォーカスして向き合っていくことが重要だと考えています。

「14億人のマーケットではなくこの5千万人から1億人のマーケットにどうやって2024年にしっかり企業がアプローチできるか?」

こういったところに様々な施策を練っていくべきだと思います。

マーケットの細分化がカギである

今まで14億人をマーケットとして考えていた企業からすると「中国やばい、撤退下ほうがいいのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、現在の日本のインバウンド市場をみていても一番お金を払って日本の商品を買っているのは相変わらず中国人です。

全体の人数においても一人あたりの購買単価はとても高い、そんな層の人々は中国には数千万人存在しています。それは日本全体のマーケットと同じくらいの数だと思います。
そういった層をしっかり分析してアプローチして、広く浅くではなく、我々の商品を確実に買ってくれそうな層に対してのマーケティングをして購買行動に繋がる施策を計画していくべきだと思います。
マイナス・ネガティブな記事を見て判断するのではなく確実なアプローチをして今までは楽観しすぎ、その後は悲観しすぎと二転三転するのではなく2024年はじっくりとアプローチしていくべきです。

「中国全土の好不況に惑わされず、日本商品を必要とするマーケットを見極めていきましょう。」

おそらく2024年は産業によって進む方向が異なり、そういった意味でもターゲットを細分化しマーケットを分析して計画していくべきだと考えます。

日本も同じ傾向だと思いますが、中国もさらに2極化が進むということが考えられます。お金を持っている方は不景気でもお金を持っています。生活が厳しい方は厳しい生活が続きます。中国も同じ傾向になっていると考えています。

中国の全人口をターゲットにしてコストパフォーマンスを売りにしていくという考えもありますが、富裕層をターゲットとしてマーケティングしていくことも全然有効だと思います。よりターゲティングをしっかり行っていきましょうということですね。

訪日観光客へのマーケティングをお考えですか?

当社では、中国、台湾、香港や東南アジアなどの訪日観光客向けのマーケティングを得意としています。是非お気軽にご相談ください。

まとめ

今回は以上となります。2024年の中国の展望についてお話しましたが、今年の年末に、私たちの予想がどれだけ正確だったかを確認するために、検証動画を撮影したいと思います。ぜひ楽しみにしていてください。

この記事を書いた人

瞿史偉(Qu-Shiwei)

瞿史偉(Qu Shiwei)

上海市出身。東京大学在学中にIT関連の会社を起業後、ENJOYJAPANを立ち上げ。中国人観光客向けのWEBメディアとフリーペーパー、旅行者向けの携帯端末レンタル事業立ち上げなどを行う。 現在は主に上海に拠点をおき、中国企業や在中日本企業の担当の他、日本企業の中国進出のサポートを行う。

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