2021年3月25日、中国を代表する2大IT企業のアリババグループとテンセントが業務提携したことが中国で話題になりました。
アリババの代表的なサービスと言えば「淘宝網(タオバオ)」、テンセントは「微信(wechat)」があります。それぞれECプラットフォームと通信プラットフォームを得意としてきましたが、多くのネットサービスで激しい競争を続けています。今回は「淘宝特価版」の概要と「アリババグループ」と「テンセント」がなぜこのタイミングで、どのような提携をしたのか解説します。

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淘宝特価版とは?

淘宝特価版とは?

「淘宝特価版」は2020年3月にリリースされたアリババグループのECプラットフォームです。

「淘宝網(タオバオ)」はこれまで中国で最も使われているECプラットフォームですが、近年は「拼多多(pingduoduo)」が多くの「下沈市場」を取り込むことに成功し、2020年の年間アクティブユーザー数は7.88億人と淘宝網を上回る結果となり、店舗も消費者も「拼多多」に流れていったことから、アリババは「拼多多」に対抗するために、「淘宝特価版」を生み出しました。

※下沈市場については別の記事で説明をしているのでこちらをご覧ください。
※関連記事:中国のビジネス界に新たに生まれた「下沈市場」とは?【3分でわかる】

淘宝特価版の特徴

「淘宝特価版」とはその名前の通り、

「淘宝網(タオバオ)」よりも商品の販売価格が安く、消費者、店舗側に対して出す「補助金」の幅が大きいことが特長です。

そして、今年の3月に「淘宝特価版」は「淘宝網」の中の1サービスではなく、独立としたサービスとなりました。

淘宝網(タオバオ)との違い

「淘宝特価版」と「淘宝網(タオバオ)」の最大の違いは、

「淘宝特価版」は商品を工場で大規模生産し、直接供給することで、費用対効果を追求する消費者は、中間マージンを省いて購入ができるという意味の「差額0円」でショッピングが楽しめると話題になっています。

さらに、アリババグループC2M事業部長である「汪海(ワン・ハイ)」は、2021年、アリババはこの「淘宝特価版」に力を入れると宣言をしました。その本気度は、中国で一番視聴率が高いバラエティー番組(快乐大本营:Happy Camp)の年間タイトルスポンサーを獲得したことからも伝わります。

アリババとテンセントの提携の詳細

今回、アリババとテセントが業務提携した最大のメリットは、

Wechatのミニプログラム版「淘宝特価版(タオバオ特価版)」をリリースし、さらに「WechatPay」が利用できるようになるというものです。

これまで、タオバオやTmall(天猫)などのアリババ傘下のオンラインECプラットフォームでは、WechatPayでの支払いができません。逆にテンセントとビジネス往来のある企業が展開するサービス、例えば京東などでは「アリペイ」が使えません。

そのような競争関係になる中、今回アリババグループが、テンセントに対してwechatミニプログラム上で「淘宝特価版」を申請しwechatpayによる支払いが可能になることが明らかになりました。

Wechatが第2の戦場になる

今回「淘宝特価版」は、「拼多多」と同じように、

  • 生鮮食品
  • ファッション

上記2つのカテゴリーを重点的に展開していく予定です。そのため、この2つのプラットフォームの勝ち負けはネット上で注目されています。

「拼多多」は「淘宝特価版」より大きく先行して「下沈市場」を狙っていて大きな支持を獲得しているため、短期間で「拼多多」に追いつくことは難しいと推測されています。

しかし、ほとんどの消費者は費用対効果の高い商品が購入できれば、プラットフォームにこだわったりしません。したがって、「淘宝特価版」は「拼多多」よりも良いサービスを提供できれば追い付くことも不可能ではありません。

Wechatのみ、プログラム上はすでに「拼多多」が存在しているため、「淘宝特価版」ミニプログラム版がリリースされた際には、wechatが第2の戦場なると予測できます。現在、「淘宝特価版」がWechatのミニプログラムに加入できるようにテンセント側に申請していますが、まだ結果は出ていません。通常であれば、WeChatミニプログラムの申請は1〜2週間以内に承認されますが、未だに承認された情報が出ていないのは、拼多多はテンセントの出資先でもあるため、テンセント内でも検討を重ねている可能性があります。

まとめ

いずれにしても、消費者にとっては低価格で買い物が出来てかつWechatPayが使えるようになることはいいニュースです。ただ、この市場は大きいものの激しい価格競争が行われるため、いかに利益を確保しつつ競合製品に勝つのか、ますますメーカーにとっては悩ましいことになりそうです。


この記事を書いた人

ENJOY JAPAN 編集部

変化の早い中国のマーケティング情報を、「早く」「わかりやすく」をモットーに弊社メンバーや専門家などのチームで記事を執筆しています。

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