近年、中国では中国国産の化粧品ブランドが急激に市場シェアを広げてきており、日本においても多くの若い女性達の間で「チャイボーグメイク」という言葉が、TwitterやインスタグラムなどのSNSでも流行しています。

その中でも代表的な中国コスメブランドと言えるのは「完美日記(Perfect Diary:パーフェクトダイアリー)」と「花西子(FLORASIS:フローラシス)」ではないでしょうか?これらのブランドは中国国内では非常に高い人気となっているブランドですが、プロモーションをKOLに頼りすぎなのではないかと一部の中国ネット上で話題になっています。今回は中国コスメブランドの代表格であ「完美日記(Perfect Diary)」はなぜ注目を置く存在となったのか?どのようなKOLプロモーション戦略を行ったのか?解説いたします。

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完美日記(Perfect Diary)が実施したマーケティング戦略

完美日記(Perfect Diary)店舗
画像出典元:南充在线
http://www.nceol.com/caijing/202003/13016.html

「完美日記(Perfect Diary)」が実施したマーケティング戦略はとても単純にまとめると

「大量のKOL+芸能人」で話題を作る

ことです。

2018年に多くの女性ユーザーから支持を受け始めていた小紅書(RED)で「大量」のKOLやKOCを起用する広告プロモーションを実施したことで、ブランド名が広く認知される結果となりました。とあるデータによると「完美日記(Perfect Diary)」がこれまで起用したKOLの人数は合計1.5万人だそうです。中でも、フォロワー数が2万~5万のKOLをメインに起用していました。
実際に、小紅書で「完美日记(Perfect Diary)」を検索すると、合計32万以上の口コミ記事があり、その内容のほとんどが美容系KOLによる「口红试色(口紅の色試し)」「眼妆教程(アイメイクテクニック)」などの記事です。

小紅書で大量に口コミの種まきをした後、有名女優の「周迅(ジョウ・シュン)」をブランド全体のイメージキャラクターとして起用しました。さらに、人気俳優の「罗云熙(ロ・ユンシー)」をアイシャドウのイメージキャラクターに、人気アイドルの「朱正廷(ジュウ・ジェンティン)」を口紅のイメージキャラクターに起用しました。」

こうして、「KOL+芸能人」という戦略を数年実施してきた「完美日記(Perfect Diary)」は、2020年のTmallの化粧品売上高ランキングの中で第2位というポジションを獲得し、大きな成長を遂げました。

完美日記(Perfect Diary)の多額の広告費投下

実際に、2021年3月11日「完美日記(Perfect Diary)」の親会社である「逸仙电商(イーシェンデンシャン)」は上場して以来、初めて財務報告をリリースしました。この財務報告によると、

2020年「逸仙电商」の純利益は52.3億元(約887億円)を記録し、前年比72.6%増加。売上高は61億元(約1,017億円)で、前年比72.4%増加。純損失は26.9億元(約448億円)、マーケティングなどの広告費にかけた金額は34.1億元(約568億円)

と発表されました。

多額のマーケティング費用が計上されている財務報告を見た消費者たちは、「ある程度まとまった投資資金を集めてプロモーションに掛けないと。自己資金しか使えない状況なら、そもそも参入しないほうがいい!」とネット上では否定的な見解が目立ちました。

完美日記(Perfect Diary)の投資戦略

出典元:完美日記公式サイト
https://perfectdiary.com/

しかし、「上海博盖咨询(コンサルタント会社)」の創業者である「高剑锋(ゴー・ジェンフォン)」はネット上の言論に対して、

「完美日記(Perfect Diary)」のようなネット上で話題になっている商品は、

  • 単に利益だけを見るのはあまり意味がない
  • 利益を追求しすぎるとブランドの成長・拡大を制限してしまう
  • 逆に収益、客単価、リピート率などに焦点を当てるべき

と語りました。

実際に、消費者の規模に対する営業利益の比率に基づいてAUPU(ユーザーあたりの平均使用量)を計算すると、消費者1人あたり1回の買い物で136.22元(約2,268円)を使っていると計算できます。
また、2017年から2019年にかけて、「完美日記(Perfect Diary)」のリピート率は8.1%から41.5%に増加しました。

本来化粧品会社は、最初に利益を確保し、その利益を次のフェーズでブランドの研究開発に投資することが一般的です。
一方、「完美日記(Perfect Diary)」のような、ネット上で話題になってる商品(網紅商品)は投資と利益の順序が逆になっていることが多く、まずはオンライン上でトラフィックを集めることに焦点を当て、利益追求を急がずさらに広告宣伝に費用を回し、ブランドを消費者に認知させることが第一優先、としていることが一般的です。

美容系のブランドには成長期と成熟期の両方がありますがインターネット時代において、オリジナルブランドを育成するためには、大量の初期投資が必要不可欠となります。

中国コスメのマーケティング戦略のポイントは「KOLにお金をかける」

また別のデータでは、63%の若者は「KOL带货(KOLによっておススメされた商品)」を好み、各SNSプラットフォーム上のコンテンツを見て、買い物することが多い傾向があります。その背景から「完美日記(Perfect Diary)」は、ジャンル問わず、少しでもいいと思ったKOLが存在すれば、すぐに広告を依頼をしていました。普段1ヶ月に10件程度の広告依頼をされている人気KOLは、10件中4件が「完美日記(Perfect Diary)」だったこともありました。

2019年から中国の美容業界は絶好調な成長を続け、コロナ禍でもなお美容業界の売上は好調でした。それに伴ってKOLの広告費用も大幅に値上がりをしましたが、それでも多くの化粧品会社はKOLを起用するお金を惜しむことはありませんでした。KOLプロモーションが中国で主流になってきたことで、ブランドは赤字になってもKOLプロモーションにお金をかける一方、KOLたちは企業で勤めていた時よりも高い報酬がもらえるようになり、このようなKOLを目指す方々も日々増加しています。

しかし、大量のコンテンツが溢れている中、広告の投稿なのか、自然発生的な投稿なのか、一つ一つを見抜くことは、消費者にとって難しい問題になってきています。こうした中国ブランドと同じような戦い方をすることは多くの日本企業にとってはなかなか難しいところだと思いますが、個人的には中国の消費者のことを本当に考えたマーケティング活動を、お手伝いをしたいと強く思っております!

YouYube動画でも解説!

中国コスメの勢いについては、YouTubeでも解説しています。
5分程度ですので、通勤の行きかえりなどでもお楽しみ頂けます。
併せてぜひご確認ください!



この記事を書いた人

橋本-易珊(Hashimoto-Yishan)

橋本 易珊(Hashimoto yishan)

日中のハーフで、13歳まで上海で育つ。新卒で日系企業に入社し、上海支社で勤務。日本に帰国するタイミングでENJOY JAPANに参画。中国の美容系情報に強く、常に流行と最新の情報をベースとした提案を 得意とする。彼女が運用するnoteアカウントも大好評運用中。

Noteアカウント:中国トレンド研究所@橋本

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