5月16日、中国のショート動画プラットフォーム「快手(Kuaishou)」は、《快手輸入電子商取引プラットフォームに関する一般規則》、《快手輸入電子商取引投資管理規則》などの輸入電子商取引に関する規則を発表し、翌週の5月25日より越境EC事業「快手進口店」を開始しました。これにより、日本国内から快手内にお店を開設することができるようになり、中国に向けて商品を販売することが可能になりました。
ライバルである抖音(TikTok)は快手よりも一歩先に越境EC事業を立ち上げており、2021年1月越境EC事業を立ち上げ、1回目となるセールイベント「跨境开仓节(越境倉庫開設祭)」では1億元(約17億円)以上の売上を記録するなど、順調なスタートを切っています。年々市場規模が拡大している越境ECは、快手と抖音にとって、決して見逃してはならないビジネスチャンスなのです。ショート動画プラットフォームで激しい競争を行っている抖音と快手は、今後EC事業でも激しい競争を行っていくことになりそうです。今回は、快手の越境ECの概要と出店・販売方法について解説していきます。
※快手については、以下の記事を参考にしてください。
中国動画アプリ「快手」の概要とマーケティング活用方法について
快手の越境EC事業のスタートの背景
快手が越境ECの最初の一歩を踏み出したのは2020年11月頃でした。快手は《跨境业务管理公告(越境ECの事業管理)》を発表し、アリババグループ傘下の物流会社「菜鳥国際」と協力関係を構築し、越境ECのためのロジスティクス周りの準備を開始しました。
その後2021年3月、「快手电商(快手EC)」は、「天猫国際」、「淘宝联盟」、「菜鳥」などのアリババ系列の会社と手を組んで、山東省临沂市(リンイ市)で越境EC商品センターを設立することになります。
そして5月13日には美容コスメ系の越境ECサプライチェーン運営職の募集をかけました。美容コスメ、日用品、ホームクリーニング系の商品の越境EC関連で5年以上の経験があり、販売の面を担えることを条件にしておりました。
このようなことから、快手は間もなく越境EC事業を正式に発表するのではないかと噂され始めた最中で越境ECサービス開始のリリースを出しました。ある情報によると、快手の越境EC事業部は快手の中で最も予算が潤沢にある‘‘裕福‘‘な部門で、それだけ多額の費用をかけて事業展開を進めていく覚悟のようです。
快手越境EC「快手進口店」のビジネスモデル
こちらでは、「快手進口店」の出店方法やビジネスモデル概要を簡単にご紹介します。出店をご検討の方はご参考ください。
出店方法
現時点で、快手で越境ECの店舗を開設するには、「招待制」となっており、快手から招待されない限り出店はできません。
招待制とはいえ、多くは快手と交渉して招待をもらう形となります。
開設費用や販売手数料
招待された企業は、以下の開設費用や販売手数料が必要になります。
- 出店保証金として10万元(約170万円)が必要となります。
- 販売手数料は2~6%となっており、こちらが快手EC事業の主な収入源となります。
- その他倉庫の利用料や送料、越境EC税9.1%などが掛かります。
出店者は自社で越境EC店舗を開設し、顧客からの問い合わせなどにも出店企業が直接対応します。保税モデルの場合、保税倉庫とのやり取りは快手が間に入り対応します。
販売可能なカテゴリー(2021年6月時点)
現在、快手進口店で販売可能なカテゴリーは、以下のようになっています。
- 「美容コスメ用品」
- 「日用品」
- 「ホームクリーニング関連用品」
- 「食品」
- 「時計」
- 「高級ブランド」
と、限られたものになっており、随時追加されていく予定となっています。
【補足事項】販売カテゴリーが制限されている理由について
少し話がそれますが、快手が上記のカテゴリーにまずは絞った理由を考えていきます。まず食品と化粧品は、最も需要が高いカテゴリーだからでしょう。税関総局の統計によると、化粧品、粉ミルク、おむつ、食品などの日用消費財の輸入量は、越境ECのすべての販売商品の中で上位にランクインしています。
特に、中国国内での機能性食品に対する厳しい法律規制と比べて、越境ECで扱える「機能性食品」は、生産国の規定を満たしていれば、越境ECを通じて販売することができるため、中国では買えない商品が多いことも人気となっている大きな理由でしょう。高級ブランドに関しては、世界が新型コロナウィルスに影響されているにも関わらず、中国ではこれまで天猫国際(Tmall)、京東などのECプラットフォームでは、多くの海外の高級ブランドが販売されてきています。中国では、高級ブランドの成長は最大70%が見込まれているほどです。
なので、この高級ブランドというカテゴリーを外すという選択肢は絶対に考えられないですよね。
快手での販売方法
快手ECでの販売方法は大きく分けて2つになります。
ライブコマース
1つはライブコマース。自社のアカウントで行うLIVEの他、KOLなどに依頼してKOLのアカウントでLIVEを行い自社の店舗へリンクさせて購入に繋げる方法があります。
自社アカウントでのLIVEはなるべく毎日行いトラフィックを集めることが推奨されています。
動画コンテンツからの誘導
もう1点はコンテンツから販売ページに誘導する方法です。商品の魅力や特長が伝わるような動画コンテンツを作成して、販売ページにリンクさせます。ユーザーによって表示される動画コンテンツが異なるため、自社の想定するお客様が普段どのような動画を好みそうか検証し、それに合ったようなコンテンツを作成しましょう。また、こちらも自社アカウントでの投稿の他、KOLに紹介してもらう方法があります。
快手越境EC事業の懸念点
中国消費者協会のデータによると、これまでに数多くの越境ECプラットフォームは、頻繫に偽物が出品され販売されてしまったため、越境ECが最も消費者からの苦情が多い分野となりました。
そのため快手の越境ECに対しても、「正直、快手で輸入品を購入することに不安を感じる。」「偽物かどうか、快手のECプラットフォームとしての信頼度は大丈夫なのか」などと快手のユーザーが語りました。
快手には、「假一赔十(一つでも偽物だったら十個賠償します)」として宣伝されている商品がたくさん存在しますが、現状で、ユーザーにはその商品の出所すら表示されていないため本当かどうか分からないという状態です。
偽物販売の対策
偽物販売は快手に限らず、全ての越境ECプラットフォームが直面する難しい問題です。快手は膨大なトラフィックを活用して GMV(流通取引総額) を増やすことができますが、長い目で見ると、サプライチェーンの管理、販売前と販売後のフォロー、消費者との信頼関係を構築することなどが優先的に改善するポイントではないかと思われます。
まとめ
成長段階にあるライブコマース業界とは異なり、越境ECは導入期、成長期、発展期の3つの段階を経て、成熟期に入り、市場は比較的安定しています。
今中国で最も勢いのあるサービスの一つである快手と抖音(TikTok)が満を持して越境EC市場に参入してきましたが、多くの競合他社が存在しているため簡単に成功する市場ではありません。そんな状況の中でこの2社がどんな手を打ってくるのか。今後も注視していく必要があるでしょう。抖音の越境EC事業については別の記事で解説いたします。
お気軽にお問い合わせください!
当社では、快手や抖音への越境EC店舗開設と運用のサポートを行っております。出店に関心がある方はお問い合わせ下さい。
YouTube動画でも解説
5分程度ですので、通勤の行きかえりなどでもお楽しみ頂けます。併せてぜひご確認ください!
この記事を書いた人
変化の早い中国のマーケティング情報を、「早く」「わかりやすく」をモットーに弊社メンバーや専門家などのチームで記事を執筆しています。