中国向け越境ECでの広告表現の規制に関する法律について

前回、中国市場向けに越境ECを展開するにあたり、気を付けなければならない法律(通知・公告)について解説しました。無事にモールなどへの出店を終えていざ販売を開始するとなると必ず広告を出す必要が出てきますが、どこまでの広告表現が許されるのでしょうか?

前回の記事:【電商法だけじゃない】中国向け越境ECで注意すべき法律について

中国にも当然日本と同様に広告表現に関する法規制があります。当たり前ですが越境だからといっても軽視してよいものではなく、悪気がなくとも違反してしまった場合にはモールでの出店を取り消されるなどのペナルティーを受ける恐れがあります。今回は、越境ECを検討している事業者、もしくは、既に越境ECを実際に行っている事業者に向けて、特に重要なポイントだけに絞って広告関連法について解説をします。

中国越境ECにおける広告関連法とは

越境ECで中国向けに広告を行っていく上で関係してくる法律は以下の5つです。

  • 広告法
  • 消費者権益保護法
  • 商標法
  • 著作権法
  • 専利法(特許権・実用新案権・意匠権を含む)

このように多くの法律を知っておく必要がありますが、その中でも、まずは「広告法」と「消費者権益保護法」について、一般論をもとに説明します。
商標法・著作権法・専利法については、また別のコラムで解説します。

中国の広告法

まず、広告法についてです。

中国の広告法は、中国国内での広告行為を規範化するための法律です。したがって、越境ECにおける広告行為が同法律に規範されるかどうかは、現時点では明確にはされておりません。
確かに越境ECにおける広告で、この広告法の違反により処罰されるケースは見られます。ただ、越境ECにおける広告がこの広告法に基づいて処罰されると決まっているのかというと、そこは明確に規定がされてはいません。
また、越境ECの商流自体は中国国外という考え方を基本としている為、広告に対する監督管理は、中国国内の広告よりも緩いように思われます。

【参考】天猫国際規則

ただしその分プラットフォーム側では独自の規定を設定していることもありますので、例として下記の天猫国際が販売者に課している規定を参考にするのが良いでしょう。以下にURLを記載します。
※中国と英語です

上のURLは、商品をTmall内で掲載・プロモーションを行う際の表示規則ルールで、
下のURLが、健康食品を掲載・プロモーションをTmallで行う際の規則になります。
全て説明するととても長くなってしまうので、詳しく知りたい場合は当社までお問い合わせください。

また、広告法において注意すべき事項としては、展開する商品によっても異なってくるという認識をもっておいた方が良いでしょう。たとえば、健康食品などのサプリメントの場合は、一般の広告規制の他に健康食品における広告規制(『広告法』第18条)というものがあります。こちらも把握しておく必要がございます。

広告表現について

広告法の主な内容は広告表現についてです。該当条文は、広告法 第4条と第9条になります。記載されている事項は以下の通りです。

  • 広告は、虚偽又は誤解を招く内容を含んではならず、消費者を欺き、誤導してはならない。広告に次の各号に掲げる事由があってはならない。
  • 中華人民共和国の国旗、国歌、国章、軍旗、軍歌、軍の記章を使用する、又は形を変えて使用する。
  • 国家機関、国家機関職員の名義若しくはイメージを使用する、又は形を変えて使用する。
  • 「国家級」、「最高級」、「最良」等の用語を使用する。
  • 国家の尊厳又は利益を損ね、国家秘密を漏洩する。
  • 社会の安定を妨害し、社会公共の利益を損ねる。
  • 人身、財産の安全に危害を加え、個人のプライバシーを漏洩する。
  • 社会公共の秩序を妨害する、又は社会の良好な気風を損なう。
  • わいせつ、色情的、賭博、迷信、恐怖、暴力的な内容を含む。
  • 民族、種族、宗教、性別を差別する内容を含む。
  • 環境、自然資源又は文化遺産の保護を妨害する。
  • 法律、行政法規で禁止が規定されているその他の事由。

基本的な考え方ですよね。特に、良く問題になるケースが3番の最高級(トップクラス)などの発言ですね。日本国内の広告には【◯◯No.1】の表現が溢れておりますが、中国の広告法ではこの表現は禁止となっております。
日本市場において本当にトップで明確なエビデンスがあったとしても、表現を避けた方が良いでしょう。

サプリメントの広告表現について

次に、例として広告表現に多くの工夫がされているであろうサプリメントなどの健康食品関連の法規制(広告法 第18条)をポイント絞って説明しようと思います。

広告法18条には以下のとおり記載(一部抜粋)されております。

  • 効果、安全性を示す断言または、保証を行うことはできない。
  • 病気の予防、治療の効能に言及することはできない。
  • 広告の商品が健康を保証するために必ず必要であると謳うまたは暗示することはできない。
  • 医薬品、そのほかの健康食品との比較を行うことはできない。
  • 広告推奨者を利用して、推奨もしくは証明を行うことはできない。

したがって、よく日本ではよく見られるような他社商品との比較広告を行うことはできない点や、広告商品の利用者をもとに、広告商品が健康へと促すと謳う行為もしくは、暗示する行為は禁止されています。このあたりは、日本と異なる部分にもなりますので、十分に留意して広告表現を行った方が良いでしょう。

消費者検疫保護法について

次に、消費者権益保護法について説明していきます。

こちらの法律も広告法と同様に、越境ECにおける取引について適用されるかどうかについては明記されておりません。
しかし、前回のコラムでも解説している『越境EC小売輸入監督管理に係る諸事務の健全化に関する通知』『越境EC小売輸出入商品に係る管理監督に関する公告』に記載されている販売者に課す義務規定を見る限りでは、すくなくとも、以下の点は重要なポイントになるでしょう。

関連記事:【電商法だけじゃない】中国向け越境ECで注意すべき法律について

商品情報の開示、商品の返品・交換サービスの提供、不良品または欠陥商品のリコール制度の確立、商品品質による消費者権益侵害に対する賠償責任負担等」のような、主要の消費者権益保証義務を履行する必要はあります。
また、中国では近年個人情報保護が強化されており、特に情報の海外への持ち出しについて非常に敏感になっているので、商品の販売で得られた個人情報の保護には注意したほうが良いでしょう。

消費者検疫保護法の要点

消費者権益保護法における該当条文は、第18条、第19条、第20条、第24条になります。ポイントは以下の通りです。

  • 提供する商品もしくは、サービスが、人身もしくは財産に影響を及ぼす可能性がある場合は、事前に説明もしくは、明確な警告を行う必要があります。同時に、危害が発生する防止を考慮した説明も事前に行う必要があります。
  • 商品もしくは、サービスの品質や性能、有効期限などに関する情報は、全面的に情報を提供する必要があると記載れています。また、虚偽または、誤解されるような宣伝も行ってはいけないとも記載されております。
  • 消費者(購入者)は、商品やサービスに納得ができない場合は返品、もしくは、交換・修理などを履行すうように求めることができる。

上記に記載されている通り、昨今行き過ぎた宣伝や消費者に誤解を与えるような表現は、特に厳しく管理監督されている為、日本での宣伝行為以上に注意をした方が良いでしょう。

特にライブコマースが全盛期の今、商品を多く販売をしたいがために、勢い余って一線を超えた表現をしてしまうライバーが多く見られます。

また、日本よりも、返品がしやすい環境が法律で整備されていると感じます。
その結果、消費者もこちらが思っている以上に簡単に返品を求めるケースが多くあります。
中国での買い物祭り(618やW11)で、返品の多さが問題になるのは、こうした背景があるということも認識しておいた方が良いでしょう。

まとめ

本日は、以上となります。
法律って難しいですよね。とくに曖昧な部分が多く、実際にどうしたら良いのかわからない部分があると思います。さらに展開する商品によっても該当条文が異なっていたりします。どんなに良い商品やサービスがあっても、法律違反をしてしまっては、元も子もありません。そうなってしまう前に、十分に調査・分析を行って、中国市場を開拓していきましょう。
ご心配なことや分からないことがあればお気軽にご相談ください。

中国向けの越境ECの市場規模や利用者像、販路開拓方法は以下の記事でまとめておりますので是非ご覧ください。


この記事を書いた人

中山隆央

中山隆央

2008年、株式会社東急エージェンシー入社。国内企業・外資企業を担当し、2016年より30歳(当時最年少)にて部長職として、営業部門を統括。2017年より、ENJOY JAPANに参画し、日本企業の中国市場展開(マーケティング・越境EC)、中国企業(エンターテインメント系)の日本進出を担当。